主宰近詠(2020年3月号)

眠る見ゆ 本井 英

埋火をせせりて火箸重きこと

埋火やもの問ひたげの身柱元(チリケモト)

放つもの一毫もなし枯尾花

昨今は大鷭まじる浮寝かな

枯葉敷きつめて轍のかくれけり




径となす銀杏落葉を掃き分けて

海をへだてて富山(トミサン)の眠る見ゆ

生牡蠣の香をこそ愛づれ卓布白

牡蠣船の行灯小さく河岸に置き

隈笹の隈美しや十二月




笹鳴と聞こゆる青鵐かも知れぬ

日だまりの落葉だまりのよく香り

大磯鴫立庵 二十三世庵主となる
庵を守ることとなりたる年を守る 荻は枯れがれお数珠玉真白にぞ 鰭煽るは楽しからんや鯉の冬




こなごなの銀杏落葉ぞ色はなほ

碑の裏の落葉深きを歩きけり

キャンパスを待降節の人往き来

浮寝鳥吹かれぶつかることのなき

この日頃落葉しなやか踏みてしづか

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