眠る見ゆ 本井 英
埋火をせせりて火箸重きこと 埋火やもの問ひたげの身柱元 放つもの一毫もなし枯尾花 昨今は大鷭まじる浮寝かな 枯葉敷きつめて轍のかくれけり
径となす銀杏落葉を掃き分けて 海をへだてて富山の眠る見ゆ 生牡蠣の香をこそ愛づれ卓布白 牡蠣船の行灯小さく河岸に置き 隈笹の隈美しや十二月
笹鳴と聞こゆる青鵐かも知れぬ 日だまりの落葉だまりのよく香り大磯鴫立庵 二十三世庵主となる庵を守ることとなりたる年を守る 荻は枯れがれお数珠玉真白にぞ 鰭煽るは楽しからんや鯉の冬
こなごなの銀杏落葉ぞ色はなほ 碑の裏の落葉深きを歩きけり キャンパスを待降節の人往き来 浮寝鳥吹かれぶつかることのなき この日頃落葉しなやか踏みてしづか
主宰近詠(2020年3月号)
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