花宰相 本井 英
わけもなく立夏がうれしかりしころ 磨硝子つつじの朱 を伝へたる 夏潮の碧きに飽きず章魚を釣る 令和元年五月との魚拓かな 入港の漁船を卯波追ひ止めず
風呂をいただき麦飯にもよばれ 蚕豆をただ焼くだけの馳走にて 地の底に清滝川や若楓 蕗原を水音伝ひをりにけり 蕗原もありてかしこき辺りかな
隅田川を眼下の暮らし業平忌 在五中将と慕はれたる忌日 葬儀社のてきぱき動く薄暑かな 栃が咲きニセアカシヤが慕ひ咲き つばくらめ青と見え紫と見え
泥波の起こりては止み代を搔く 代搔の仕上げ対角線にかな 届きをる早苗撫づれば心足る 芭蕉玉巻くきゆつきゆつと音しさう 百官の居ならぶどれも花宰相
主宰近詠(2019年8月号)
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