磯遊 本井英
一病を養つてをる朝寝かな 朝桜くまなく照らし出されたり 春昼や木魚の音のゆるみ止み 猫駆ける音のをちこち花の館 渚まではみ出して蝶舞へるかな
磯遊パンツは疾うに濡れほとび 尼さまも足袋を脱がれて磯遊 英霊の叔父さんのこと磯遊 母さんの匂ひのタオル磯遊 復活祭の御堂やいまも畳敷き
庭の春にはかに山路めくところ つつがの身ながら今日あり葱坊主 はるかなる海を見届け遅桜 デニム屋に木香薔薇の咲きさかり 熊蜂の浮かびをりけり弾けけり六義園
羅生門かづらしやべりづめの女 青大将をるやいつものいぼたの木 貝母の実とはかくかくや触れてもみ 水芭蕉の倒れし白を水跨ぐ 海月大人よろづてきぱきとは行かぬ