春の風邪明るき場所で眠るなり  黒田冥柯

 季題は「春の風邪」。ただ「風邪」ならば冬の季題であるが、「春の風邪」というとどこか深刻でないような、そのうち、いつの間にか治ってしまうような印象のものとなる。虚子の作には〈化粧して気分すぐれず春の風邪〉〈病にも色あらば黄や春の風邪〉〈老大事春の風邪などひくまじく〉〈春の風邪重きに非ずやや老いし〉などもあり、おおよそその辺りのニュアンスは伝わるであろう。

 この句で言えば、「明るき場所」に「春の風邪」らしさがある。冬場の本格的な「風邪」ならしっかり薬を飲んで、部屋は暗くして、「ともかく、早く治るために寝る」。ところが「春の風邪」では、どこか日常を引きずったままで「深刻にならずに」横になっているのであろう。季題の捉え方として正しいし、それでいて、どこか気楽な、若者らしい感じも出ている。(本井 英)

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