分袂といふこと 本井 英
春寒や薄く冷たく猫の耳 福寿草ひらきしぶるといふことも 水たまり広がつてゐる春田かな 春の雨マルチシートをしとど打ち 二三戸はありけむ野梅咲くばかり
啓蟄の地へ下ろしたるユンボかな 地虫出づる日にして灰の水曜日 立ち込みて腰の高さの蜆舟 鋤簾の柄肩に食ひ込み蜆搔く 着陸機の腹過ぎてゆく蜆採
文士村とて似顔絵もあたたかし イクメンを見守つてをるミモザかな 島渡船卒業式の来賓を 卒業式了へてそのまま来し墓前 分袂といふことのあり蜷の道
青といふ色を蔵して土筆の穂 芹の水見下ろすばかり病後の身 麗かに五馬力ほどか耕耘機 呉羽山春野の皺のやうにかな 鷺の嘴刺さる刹那の春の水
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