主宰近詠(2019年6月号)

分袂といふこと 本井 英

春寒や薄く冷たく猫の耳

福寿草ひらきしぶるといふことも

水たまり広がつてゐる春田かな

春の雨マルチシートをしとど打ち

二三戸はありけむ野梅咲くばかり




啓蟄の地へ下ろしたるユンボかな

地虫出づる日にして灰の水曜日

立ち込みて腰の高さの蜆舟

鋤簾の柄肩に食ひ込み蜆搔く

着陸機の腹過ぎてゆく蜆採




文士村とて似顔絵もあたたかし

イクメンを見守つてをるミモザかな

島渡船卒業式の来賓を

卒業式了へてそのまま来し墓前

分袂といふことのあり蜷の道




青といふ色を蔵して土筆の穂

芹の水見下ろすばかり病後の身

麗かに五馬力ほどか耕耘機

呉羽山春野の皺のやうにかな

鷺の嘴刺さる刹那の春の水
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