旅愁さらなる 本井英
惜春の旅にあり鶏鳴も聞き 芥川荘と命けて籘寝椅子 熊蜂の宙を領して唸りやまず 行く春の笯をあらためてまた埋て 神饌田なる代田の水の澄みわたり
選挙カーの声の遠さに夕桜 橋桁をくぐり遊びてつばくらめ 雉啼けば旅愁さらなる朝の窓 朝餉まで躑躅の庭をたもとほり 小綬鶏のさらに遠くで雉の啼く
青蘆の侵入したる売地かな 初心者は初心者向きの波に乗り 乗りくだる崩れはじめてをる波を サーファーのもんどり打つは常のこと 棲みつきしサーファーの庭芥子の花
気取りなく広き宿庭野蒜生ひ 逗留の日々紫蘭咲き増ゆる日々 紫陽花は対の若葉をうち重ね 河口なる弘法麦の穂ぞ青き 癒えてゆく暮らし日焼けも少しせし
主宰近詠(2018年7月号)
コメントを残す