崖の裾まで 本井 英
朝寒や介護タクシー待たせおき 十三夜もう始まつてをりにけり冬立ちて市バスの色のやさしけれ 冬立つや絵馬にくろぐろ八咫烏 木の葉雨疎水等高線なぞり京都 三句
京都清風荘 二句お二階の窓ごとの冬紅葉かな 杣道に似せてしつらへ落葉積む 大根畑防潮堤の外側にも 大根の穴へ土塊こぼれけり 腕なげて鷹匠鷹を放ちけり
小春なる沼のかたちのまかがやき 水鳥の気配や蘆襖をへだて 曳き波が枯蘆を囁かせたる 細枝に細枝に冬桜かな 沖磯の奥宮もなほ神の留守
海桐の実はじけてくすみゆくばかり 酉の市ここの手締めは柝が入り トンネルを抜けてこちらの冬紅葉 崖の裾まできつちりと冬耕す 大綿の浮いて大人し音もなく