月別アーカイブ: 2019年7月

課題句(2019年7月号)

課題句「夕立」          根岸美紀子 選

夕立を貫く鷺の鼓翼かな		田中 香
夕立あと雉鳩の七拍子また

夕立にそろととりこむ将棋盤		津田祥子
夕立や黙々と糠かきまはし		梅岡礼子
山の湯を夕立やどりに借り申し		本井 英
夕立を猫と見てをる窓辺かな		児玉和子

日盛のはちきれさうな機体かな  前北かおる

 季題は「日盛」。「機体」は航空機のそれ。したがって真夏の空港での所見ということになる。作者の心に浮かんだ言葉は「はちきれさう」という一語のみである。実際、音に出して「は・ち・き・れ・さ・う」と言ったかどうかは判らないが、ともかく作者の眼前の景色、大きなガラス張りの窓の外の、コンクリートと「日盛」の日差しと、旅客機の機体の形状に対して、作者は「はちきれさう」という一単語で応じたのであった。

 旅客機の機体について詳しいわけではないが、例えば昔懐かしい「Y11」の機体を思い出してみても、あるいは一世を風靡した「ジャンボ機」を思い出してみても「はちきれさう」という形状とは違っていた。ところが近年目にする旅客機の幾つかの、特に前方部分には「はちきれさう」という、「パンパンに膨らんだ」印象がある。それだけのことであるが、こうした小さな発見を通じて「空港の日盛」が伝われば、これで「俳人」としての役目は全うしたことになるのである。 (本井 英)

雑詠(2019年7月号)

日盛のはちきれさうな機体かな      前北かおる
たなごころ絹糸草に触れにけり
花火見て戻るビジネスホテルかな
この島に虹の立つまでとどまらむか

賓(マレビト)の現れ野遊に出掛けたる   杉原祐之
仙人掌の雨の中にぞ置かれたる     藤野 澪
春寒や無人の路地に煙草の香      梅岡礼子
磴一歩下れば寒き川の風        山本道子

主宰近詠(2019年7月号)

磯遊  本井英

一病を養つてをる朝寝かな

朝桜くまなく照らし出されたり

春昼や木魚の音のゆるみ止み

猫駆ける音のをちこち花の館

渚まではみ出して蝶舞へるかな



磯遊パンツは疾うに濡れほとび

尼さまも足袋を脱がれて磯遊

英霊の叔父さんのこと磯遊

母さんの匂ひのタオル磯遊

復活祭の御堂やいまも畳敷き


六義園 

庭の春にはかに山路めくところ つつがの身ながら今日あり葱坊主 はるかなる海を見届け遅桜 デニム屋に木香薔薇の咲きさかり 熊蜂の浮かびをりけり弾けけり



羅生門かづらしやべりづめの女

青大将をるやいつものいぼたの木

貝母の実とはかくかくや触れてもみ

水芭蕉の倒れし白を水跨ぐ

海月大人よろづてきぱきとは行かぬ