日別アーカイブ: 2017年7月8日

課題句(2017年7月号)

「団扇」	  杉原祐之 選	

客人の来る度増ゆる団扇かな		前北麻里子
工作の団扇魚型蛙型

お揃ひの団扇手に手に終電に		田島照子
長男の生まれし頃の団扇かな		櫻井茂之
べきことの付箋貼られて団扇かな	藤永貴之
水団扇瑠璃の器に漬けおける		本井英

夏蝶の翼に青きブーメラン  前北かおる

 「夏蝶」は、春の「蝶」とも、「秋蝶」とも「冬蝶(凍蝶)」ともどこか違う、生命力にあふれ、ときには猛々しい感じすらある。

 作者はその「夏蝶」(おそらくはアオスジアゲハであろう)を凝視したのであろう。頭・胸・胴・触角・脚・翅と目を凝らして見つめていると、ふっと黒い羽根の中を彎曲しながら流れている「青い」筋が見えてきた。その筋を見つめるとその筋は、「七・三」のあたりで大きく曲がっている。さらに見つめているうちに、「何かに似ているなあ」と思えて来た。その次の瞬間「ブーメラン」という言葉が、胸奥の「言葉の箱」の蓋を開けて、沸きあがってきたのである。

 「花鳥諷詠」とは造化の神が一瞬見せてくれる、この世のさまざまの季題の「本当の姿」を五・七・五の調べに乗せて詠いあげること。その境地に至る方法はただ一つ、自分の「主観」をどこまでも抑えて、出来る限り「客観的になって(完全に客観的になることは出来ない)」対象を凝視することである。

 「ブーメラン」という言葉は、その形状からのみ「識域上」に沸きあがったのではない。そこには「ブーメラン」が野山の空気を切って翔る姿も重ね合わされているのである。そのことによって「夏蝶」の自信に満ちた飛翔の姿までが表現されてくる。 (本井 英)

雑詠(2017年7月号)

夏蝶の翼に青きブーメラン			前北かおる
青桐の幹颯爽とみどりなる
山の水張り直したるプールかな
吹き縒れて御神酒の糸や海開

駅までのシャッター通り苗木売る	小沢藪柑子
風邪の子の手を差し出して来りけり	杉原祐之
堅香子に反れよ反れよと日も風も	青木百舌鳥
食卓の父の不在や扇風機		櫻井茂之

主宰近詠(2017年7月号)

芭蕉林   本井 英

蕗原を雨が鞣して青の色

城垣のたるむあたりの花菫

あたたかや網を繕ふ右手に杼

花の雨焼き場に向かふバスも着き

亀鳴くや夜舟のありしころのこと




コンビニが出来しころより亀鳴かぬ

春の蠅翅ほつそりとをりにけり

画眉鳥の囀いよいよ華語めくよ

雨風に古巣の腰の抜けはじめ

ふりたてて短く勁く蜷の髯




つかの間を春潮に置き箱眼鏡

芭蕉林かな径出あひ水出あひ

芭蕉玉巻く肩ぽんと叩きたく

芭蕉林抜け黄菖蒲をはるかにす

雲雀落ちはじめて白つぽく見ゆる




落ちそめて雲雀大きくながれけり

村うらら五百余柱殉国碑

若蘆や手旗のやうに葉をかまへ

黄色から始まつてをり蛇苺

深川に行幸啓碑昭和の日