「団扇」 杉原祐之 選 客人の来る度増ゆる団扇かな 前北麻里子 工作の団扇魚型蛙型 お揃ひの団扇手に手に終電に 田島照子 長男の生まれし頃の団扇かな 櫻井茂之 べきことの付箋貼られて団扇かな 藤永貴之 水団扇瑠璃の器に漬けおける 本井英
課題句(2017年7月号)
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「団扇」 杉原祐之 選 客人の来る度増ゆる団扇かな 前北麻里子 工作の団扇魚型蛙型 お揃ひの団扇手に手に終電に 田島照子 長男の生まれし頃の団扇かな 櫻井茂之 べきことの付箋貼られて団扇かな 藤永貴之 水団扇瑠璃の器に漬けおける 本井英
「夏蝶」は、春の「蝶」とも、「秋蝶」とも「冬蝶(凍蝶)」ともどこか違う、生命力にあふれ、ときには猛々しい感じすらある。
作者はその「夏蝶」(おそらくはアオスジアゲハであろう)を凝視したのであろう。頭・胸・胴・触角・脚・翅と目を凝らして見つめていると、ふっと黒い羽根の中を彎曲しながら流れている「青い」筋が見えてきた。その筋を見つめるとその筋は、「七・三」のあたりで大きく曲がっている。さらに見つめているうちに、「何かに似ているなあ」と思えて来た。その次の瞬間「ブーメラン」という言葉が、胸奥の「言葉の箱」の蓋を開けて、沸きあがってきたのである。
「花鳥諷詠」とは造化の神が一瞬見せてくれる、この世のさまざまの季題の「本当の姿」を五・七・五の調べに乗せて詠いあげること。その境地に至る方法はただ一つ、自分の「主観」をどこまでも抑えて、出来る限り「客観的になって(完全に客観的になることは出来ない)」対象を凝視することである。
「ブーメラン」という言葉は、その形状からのみ「識域上」に沸きあがったのではない。そこには「ブーメラン」が野山の空気を切って翔る姿も重ね合わされているのである。そのことによって「夏蝶」の自信に満ちた飛翔の姿までが表現されてくる。 (本井 英)
夏蝶の翼に青きブーメラン 前北かおる 青桐の幹颯爽とみどりなる 山の水張り直したるプールかな 吹き縒れて御神酒の糸や海開 駅までのシャッター通り苗木売る 小沢藪柑子 風邪の子の手を差し出して来りけり 杉原祐之 堅香子に反れよ反れよと日も風も 青木百舌鳥 食卓の父の不在や扇風機 櫻井茂之
芭蕉林 本井 英
蕗原を雨が鞣して青の色 城垣のたるむあたりの花菫 あたたかや網を繕ふ右手に杼 花の雨焼き場に向かふバスも着き 亀鳴くや夜舟のありしころのこと
コンビニが出来しころより亀鳴かぬ 春の蠅翅ほつそりとをりにけり 画眉鳥の囀いよいよ華語めくよ 雨風に古巣の腰の抜けはじめ ふりたてて短く勁く蜷の髯
つかの間を春潮に置き箱眼鏡 芭蕉林かな径出あひ水出あひ 芭蕉玉巻く肩ぽんと叩きたく 芭蕉林抜け黄菖蒲をはるかにす 雲雀落ちはじめて白つぽく見ゆる
落ちそめて雲雀大きくながれけり 村うらら五百余柱殉国碑 若蘆や手旗のやうに葉をかまへ 黄色から始まつてをり蛇苺 深川に行幸啓碑昭和の日