芭蕉林 本井 英
蕗原を雨が鞣して青の色 城垣のたるむあたりの花菫 あたたかや網を繕ふ右手に杼 花の雨焼き場に向かふバスも着き 亀鳴くや夜舟のありしころのこと
コンビニが出来しころより亀鳴かぬ 春の蠅翅ほつそりとをりにけり 画眉鳥の囀いよいよ華語めくよ 雨風に古巣の腰の抜けはじめ ふりたてて短く勁く蜷の髯
つかの間を春潮に置き箱眼鏡 芭蕉林かな径出あひ水出あひ 芭蕉玉巻く肩ぽんと叩きたく 芭蕉林抜け黄菖蒲をはるかにす 雲雀落ちはじめて白つぽく見ゆる
落ちそめて雲雀大きくながれけり 村うらら五百余柱殉国碑 若蘆や手旗のやうに葉をかまへ 黄色から始まつてをり蛇苺 深川に行幸啓碑昭和の日