月別アーカイブ: 2017年8月

課題句(2017年8月号)

「立秋」 川瀬しはす 選

今朝の秋フクギ並木に島の風		冨田いづみ
立秋の波音高き礁(イクリ)かな
中年に立秋の日のちりちりす		青木百舌鳥
また来るねと言ひてそれきり秋立ちぬ	山本道子
立秋や裁ちつぱなしのワンピース	大貫松子
毎年の立秋を過ぐロッヂかな		杉原祐之

石段を上がればありし茅の輪かな   藤永貴之

 季題は「茅の輪」。陰暦六月末の「夏越の祓」に関連したもので「菅貫」、「菅抜」という傍題もある。歳時記的には六月末のものとなるが、原則的には十二月の末にも同じことがあって然るべきで、実際に大晦日に「茅の輪」を立ててある神社も多くある。多くの解説書は「茅の輪くぐり」を厄除けと解説するが、筆者は「再生」を演じているものだと考えている。

 さて一句の味わいどころは「石段を上がればありし」。つまり「石段」の下にいた時には見えていなかった「茅の輪」が「石段」を上がってみたら「あった」というのである。そのことから毎年「夏越の祓」のために参拝している神社ではないことも判る。

 たまたま旅先で詣でた神社で、長い石段を登って丘の上の大前にでたところ「茅の輪」があった。そこで作者は、ああ、もう「夏越の祓」の頃となっていたのだと知ったのであろう。(本井英)

雑詠(2017年8月号)

石段を上がればありし茅の輪かな		藤永貴之
初嵐へくそかづらの花こぼし
蟷螂の創一つなく死んでをり
日の当たる石にとまれり秋の蝶
亀鳴くや鵠(クグヒ)の沼の消えし町	津田祥子
小径を麓へたどり春深し		小沢藪柑子
一旦は空へ空へと花吹雪		前田なな
春の蚊の目の前に来てそこに消ゆ	高瀬竟二

主宰近詠(2017年8月号)

池塘のやうや    本井英

母疾うに亡き母の日を姉弟

湾内の卯波を熨して豪華船

雲割つて高度下げれば卯波たつ

柿の花散らし流してけふの雨

賀茂祭楽(ガク)といふものなきままに




先駆けの乗尻六騎日焼けたる

鷺しらず葵祭の川なかに

新茶古茶新茶古茶なほ古茶の日も

古茶啜る音のながきを憎みけり

恭順の一身丸め根切虫




抛られて鯉口中へ根切虫

吾が断ちし根ツ切虫の天寿かな

葉はさらに風に応へて花楝

虫喰ひが池塘のやうや蕗広葉

干あがつてしまひさうなり莕菜咲き




佳きお庭にはクローバー品下り

すでに順路せばめそめたり萩若葉

春蟬の空蟬なるはかく小さく

夏潮が引けば甘藻は横たはり

夏潮の引きて貽貝の露はにぞ