月別アーカイブ: 2011年12月

『俳壇』2012年1月号~虚子百句

『俳壇』2012年1月号~虚子百句

 

『俳壇』2012年1月号

先週に続いて総合誌からご紹介します。

本阿弥書店から12月15日に出版された『俳壇』の最新号で、本井英主宰が★誌上句集「高濱虚子」で百句選並びに解説を書かれています。

 本井主宰が選んだ「虚子百句」、雑誌の座談会などで推薦されている句との比較など是非是非味わってみてください。

本阿弥書店HP

http://homepage3.nifty.com/honamisyoten/top.htm

町田優第零句集『いらっしゃい』を読む_稲垣秀俊

第零句集4号は町田優人さん(俳号 優)の『いらつしゃい』。町田さんは昭和62年、大学の一般教養で本井氏に出会い、その縁で俳句の世界に入られた。夏潮には平成19年から参加されている。

町田さんの俳句には底知れない不思議な感じがあり、その一部は音の操作に由来するものではないかと私は考える。以下に挙げるように、『いらつしゃい』には音量を絞ったように感じられる句がよく見られる。

              竜胆を一輪毎の喫茶店

              暑きこと京成の景屋根ばかり

              遠足のすぎて鎖場残りけり

              初空に敷き広げたる都会かな

              秋出水納屋に農具の下がりけり

これらの句は視点を工夫して、あるいは音のフェードアウトを用いて音の情報をカットし、読者の注意を季題に誘導しながら視覚的な印象を強めることに成功している。このような視覚情報と聴覚情報の制御が、独特な雰囲気をかもし出す装置の一つとなっているのではないだろうか。

一方で、音の操作に関係なく独自の世界を見せる句も多い。ここでは次の三句をとりあげる。

              いらつしゃいまたいらつしゃい芒原

季題は芒。生い茂った芒が風に吹かれる様子を、別れを惜しんで手を振っているかのように描写している。「いらつしゃい」という言葉の持つ暖かみが、やさしげな葉ずれの音や、芒原の日当たりの良さまでも想像させる。

              鰯雲裏山を越え来たりけり

季題は鰯雲。すっきりと晴れた空を見上げると、裏山の向こうから鰯雲が近づいてくる。すっかり秋である。出来事としてはそれだけだが、生活空間である裏山を配することで、季節の移り変わりに親しみを感じさせる。

              腹立てているかも知れずサングラス

季題はサングラス。口元から感情を推測できないという事から、相手はあまり親しくない人だと考えられる。サングラスのせいで表情が読めないのはよくあることだが、そこをなんとか推測しようとするところに可笑しみがある。

 

 

稲垣秀俊 記

対象への密着と自己凝視―藤永貴之句集『鍵』を読む_涼野海音(「火星」・「晨」)

 対象にクローズアップする写生を得意とする作家がいる。四Sの中では、「ひつぱれる絲まつすぐや甲蟲」の句で有名な高野素十。

 藤永氏もこのようなタイプの作家に属するのではないだろうか。それは次のような句からうかがえる。

  居並びてみな横顔の都鳥

 一瞬「あっ」と思わせられ同時に納得させられた一句である。季題に対する眼が養われていないと詠めない句であろう。大発見ばかりを詠むのが俳句ではない。

  波の端踏んで歩める恵方かな

 この句も先の句と同様に誰もが見逃しそうなところを詠んでいる。実作者としての経験から言えば、「波の端」という核となる表現に至るまでは苦労されたかもしれない。本句集の序文にあるように、やはり「季題の前にじっと佇んで」詠まれたのであろうか。

  夕立にちから加はり来たりけり

 掲句は「一物仕立」を十分に生かしている。上五から下五まで一気まで詠むことで、夕立が地を打つ迫力を再現している。

 さてこのような対象に密着する詠法は、自己凝視をして詠む姿勢にも通じているように思える。

  立冬と書くや白墨もて太く

 「書くや」・「白墨」・「太く」の「く」の響きが心地よい格調を漂わせている。それはいかにも「立冬」にふさわしく思えた。

  沈丁花鍵を取り出すとき匂ふ

 句集名の由来になっている一句である。跋で作者は語っている、「私は、いつも持ち歩いている鍵を、ふといとおしく思うことがある」と。日常生活への慈しみが、そこはかとなくにじみ出ている。

  春月やわれひとり下り田端駅

 田端駅というと、新宿や池袋などのターミナル駅より、こじんまりしている。そんな雰囲気と春月がマッチしている。作者は帰宅途中にふっと空を見上げたのであろう。

 最後になるが、他に鑑賞したかった句をあげる。

  家の灯の遠くに点り鶴の村

  菜の花に観世音寺の甍見ゆ

  エイプリルフール一日中ひとり

  鵯の声がさヽりて椿落つ

  母よりの暑中見舞の初めて来し

  さみだれやタクシーの待つ楽屋口

  踝のとんがりを蚊の刺しにけり

  男とも女とも見え秋の暮

  アスファルトに出てしまひたる葛の先

 

<変更情報>1月のタイドプール句会 1月19日→12日へ

<変更情報>1月のタイドプール句会 1月19日→12日へ

 

1月のタイドプール句会の開催日が変更となりました。

変更前:1月19日13時~

変更後:1月12日13時~

集合場所は、JR上野駅 上野公園口上野文化会館前です。

 

寒の季題が沢山見られると思います。多くの皆様のご参加をお待ち申上げております。

 

涼野海音さんに第零句集を鑑賞して頂きました!

この度、涼野海音さんに町田優さんの『いらっしゃい』https://natsushio.com/?p=2772

』を鑑賞して頂きました。

涼野海音さんは香川県在住で「火星」(山尾玉藻主宰)、「晨」(大峯あきら主宰)に所属。

平成23年の石田波郷新人賞を受賞されている、まだ若い俳人です。

「夏潮」には「mixi句会」に参加いただいております。近刊の総合誌では『俳壇 1月号』に句を寄せられております。

 

 今後も機会があれば、誌友外の方にも登場して頂こうと考えております。お楽しみに。