投稿者「祐之」のアーカイブ

祐之 について

「夏潮」運営委員の杉原です。 平成二十二年四月に第一句集『先つぽへ』を出版

押野裕句集『雲の座』ふらんす堂_(杉原)

押野裕句集『雲の座』ふらんす堂

 

押野裕『雲の座』

押野裕『雲の座』

押野裕さんの第一句集。ふらんす堂の「精鋭俳句叢書」として刊行。

押野さんは1967年神奈川県小田原市生まれ。平成7年に小沢實氏に師事し、「鷹」に入会。その後「澤」創刊に参加。平成15年に「澤」新人賞を受賞。17年~20年にかけて「澤」編集長を勤められる。小沢實氏の暖かい「序文」を読むと、氏は創刊以来小澤氏の貴重な右腕として活躍されていたことが分る。「栞」は片山由美子氏が執筆。

 

 句の特徴として、「澤俳句」が前面に出ている。小沢實氏や現在の編集長である榮猿丸氏の俳句と狙っているところは非常に近い。

 「即物」的な見方、現代を切り取る視線、若干崩したリズムに情感を潜める、只事と紙一重の詩的精神、と言う「澤」の俳句の特徴が十二分に楽しめるが、更にそれに加え、押野氏の場合は静かに肝の据わった俳句がアレンジされていると思う。

 また若干紋切り型の感はあるが、歴史的背景を持った題材について、積極的に詠まれており、楽しませてくれる。

 

 学校の先生をされているのか、野球の光景を読んだ俳句が散見されたが、その多くが説明的になっていて詩的でないのは残念である。このようにこの集中にはばらつきが大きいと感じるところがある。ただし、これも常に新しい視点で俳句の幅を広げようとした活動の結果であり、今後の活躍が楽しみである。

 

・九天より大き蜜柑の落ちにけり 裕

季題は「蜜柑」。九天は高い空と言う意味で使っている。

九天という言葉を巧みに用いて「高いところから蜜柑が降ってきた。存外大きかった」、と言う只事を俳句と言う詩に昇華させた。

たびたび集中に出てくる、歴史的時代にまで句の景が広がってくる感じを持たせることに成功している。

 

・負鶏を蛇口の水に洗ひをり 裕

季題は「鶏合せ」。負けた鶏は二度と鶏合せには出せない。

飼い主は鶏をねぎらっているのか、今後のことを考えているのか、何れにせよ闘鶏場の水道で勝負に敗れた鶏を洗っている。

淡々と見た光景を読んでいるのだが、その句を読んだ者は無数の想像が展開される。「冷静な写生の眼」が生んだ一句。

 

●「走者打者」2000年

山茶花や運河を前に酒の蔵

●「九天」2001年

漱石忌教鞭なる語古りにけり

的の前如雨露の水を撒きにけり

 ●「戦後」2002年

機関庫に十の機関車秋高し

左義長の煙川面を渡りけり

石段に折れ炎天のわが影は

内野土埃外野はあかとんぼ

 ●「燦々」2003年

少年の足は処女地へ潮干狩

闘牛の引き分けてなほ収まらず

一戸建持てば肩凝り蝸牛

源流はまだ雪渓の内にあり

上下を違へし魚拓蚯蚓鳴く

 ●「小出刃」平成21年

春怒濤波止の鯨の絵をあらふ

弔電のほどかれぬまま鳥雲に

寄港地の湯に古なじみ鰹船

かはらけの欠片の躍る噴井かな

鍋底のことは語らず芋煮会

 ●「あら汁」平成22年

表具師の糊のさらさら木の芽風

太刀魚の以下あら汁となりにけり

 

(杉原 祐之記)

ふらんす堂オンラインショップ

http://furansudo.ocnk.net/product/1738

ふらんす堂「みづいろの空」関悦史の評論

http://furansudo.sblo.jp/article/47805850.html

「夏潮 第零句集シリーズ Vol.2」磯田和子『花火』

 「夏潮第零句集シリーズ」が始まった。第2号は磯田和子(わこ)さんが登場

 和子さんは、昭和三十六富山県生。洗足大学魚津短期大学時代に、講師として東京から通っていた本井英に師事。その後、平成四年から「惜春」入会、「夏潮」には創刊から参加されている。

 富山の句会では中心的な役割を果たして頂いており、今年の5月含めて毎年のように富山での吟行旅行を企画いただき、楽しい場を提供いただいている。

 磯田和子さんは柔らかな詩人である。その句の特徴は本井英が序で述べている通りである(主宰がこのシリーズの序文を書くのは余り良くないと個人的には思いますが。。。)。

鰺の眼の大きく浅く空を見る 和子

季題は「鰺」。課題句で私が選者した時の句。「大きく浅く」と言う表現に自然豊かな富山に暮らす磯田さんの個性を感じた。

 肩に力を入れない句風である為、平易な言葉遣いで詩をなされている。よって、一部では類型的な句、只事の報告の句も散見されるが、そこを乗越え、今後も「柔らかな心」と「冷静な写生の眼」で磯田さんの第一句集への歩みを楽しみにしていきたい。

その為にキーワードは富山の風土・風俗をもっと積極的に詠み込んで行った俳句を拝見したい。

 

『花火』抄 (杉原祐之選)

若葉風母となる日の近づきぬ

秋繭の籠れる部屋の薄明り

成人の日の立山と対峙せる

雪折れに芽吹く力のありにけり

燕にシャッター少し開けてあり

ふいに手を取られ祭の人込みに

ファインダーはみ出し割るゝ大花火

運ばれて来ては囃され夏料理

ボール未だ載せしまんまに大枯木

目の高さより落ちてくる下り簗

 

(杉原祐之 記)

関係ブログ

俳諧師前北かおる http://maekitakaoru.blog100.fc2.com/blog-entry-702.html

磯田和子『花火』鑑賞 (稲垣秀俊)

 


磯田和子さんにインタビューをしました。

Q1:100句の内、ご自分にとって渾身の一句

A1:「歓声のどんに鎮まり揚花火 和子」

渾身といえるかどうかわかりませんが、句集の題名にしました「花火」を詠んだうちの一句です。

 

Q2:100句まとめた後、次のステージへ向けての意気込み。

A2:今までの超スローペースを反省し、サクサクと句を作って行きたいと思います。

 

Q3:100句まとめた感想を一句で。

A3:秋天のクレーンの先の先に雲  和子

【変更】11月19日土曜吟行会 句会場(杉原)

お知らせです。

先般UPデートした、11月19日土曜吟行会(築地本願寺、築地場外市場、波除稲荷神社)の

句会場ですが、下記の通り変更となっております。ご注意下さい

(句会案内には反映されております)。

 

★変更前
> 中央区勝どき区民館 03-3531-0592
★変更後
> 中央区明石町区民館 3号室 03-3546-9125

ご留意下さい。是非多くの皆様のご参加お待ちしております
(私が参加できていないのですが。。。

					

長谷川耿人句集『波止の鯨』本阿弥書店_(杉原)

長谷川耿人句集『波止の鯨』本阿弥書店

 

長谷川耿人『波止の鯨』

長谷川耿人『波止の鯨』

長谷川耿人(こうじん)さんの第一句集。長谷川さんは1963年神奈川県川崎市生まれ。平成14年に「春月」に入会し、戸恒東人氏に師事。「春月新人賞」「春月コンクール大賞」「春月賞」の3賞を受賞。「春月」同人として中心的な役割を果たされているご様子。

「序文」や「跋」を読むと、氏は東京水産大学を卒業後漁業関係の政府機関に就職、ご尊父の介護のために退職され、現在は福祉関係のNPO法人として活躍されている。

 

 長谷川さんの俳句と言うのは、難しい文学的な用語を用いることは少なく、平易な言葉で詩を紡ぎ出している。また句の形も奇を衒うことなく、如何にも社会の中で真直ぐ働いてこられた方がもつ勤め人としての誠実さに溢れているように思う。

 

 また、お仕事柄魚や釣りに関する句については一歩踏み込んだ表現がなされており感心した。このように句集を読むことで日常の作者の人柄が伝わってくるのは嬉しいことである。

 

 余談であるが私の会社への入社が平成14年であり、長谷川さんの俳暦と重なることとなる。今年は丁度10年目になることもありそういった方の句集を読む機会が多い。自分の来た道と重ねつつ本句集を読んだ。

長谷川さんの作句開始から10年経った最終盤の平成22年の俳句は巧みさが目立ってくる。同時に自己模倣の型が現れてきているのが気になった。ここをどうやってブレイクスルーしていくか、長谷川さんの課題になるであろう。

 

・風体ではかる腕前鮎解禁 耿人

季題は「鮎釣」。昨年、鵜飼吟行で関市を訪ねた際に見学したが、確かに鮎釣は川の流れに身を置きながら、各種手際の良さとかが必要とされる。

故に風体を見れば腕前が分るということにも納得である。また、下五の「あゆ・かいきん」と言う6文字で7音節のリズムがいよいよ、シーズンがやってくるという昂揚感を伝えるのに非常に効果的である。

 

・初雪やうつすら焦ぐる紙の鍋 耿人

季題は「初雪」。紙の鍋というのは、最近居酒屋でよく見かける、所謂「お一人様用」鍋を指すのだろう。

初雪が降るくらいなので、相当に冷える夜なのであろう。

馴染みの居酒屋に入り熱燗を傾けながら、「紙の鍋」をコンロで暖めていたら、外の初雪に気を取られたか、それとも話が弾んだのか鍋が焦げてしまった。

軽い興味の句のようで、一人暮らしの男の様子が良く分り、しんみりさせる一句に仕立て上げている。

「初雪や」と言う打出しで句の雰囲気を醸成することに成功している。

 

 

●「鰤起し」平成14年~16年

広告の裏に手習ひ啄木忌

煎餅をうらがへす手の皹深し

 

●「金魚玉」平成17年~18年

石仏の首に継ぎ痕若葉寒

顔寄せてみてもつれなく金魚玉

夜学生ひとかたまりは酒場へと

 

●「氷頭膾」平成19年

あつてなき船の定員柳絮飛ぶ

出所の言へぬ小遣ひラムネ抜く

新巻のどこで眼の失せしやら

 

●「潮干狩」平成20年

少年の足は処女地へ潮干狩

闘牛の引き分けてなほ収まらず

一戸建持てば肩凝り蝸牛

源流はまだ雪渓の内にあり

上下を違へし魚拓蚯蚓鳴く

 

●「小出刃」平成21年

春怒濤波止の鯨の絵をあらふ

弔電のほどかれぬまま鳥雲に

寄港地の湯に古なじみ鰹船

かはらけの欠片の躍る噴井かな

鍋底のことは語らず芋煮会

 

●「あら汁」平成22年

表具師の糊のさらさら木の芽風

太刀魚の以下あら汁となりにけり

 

(杉原 祐之記)

 

spica「よむ」_(杉原)

先日ご紹介した、女性3名で更新されている 俳句webマガジン「spica」。

その「よむ」と言うコーナーに、私の俳句をご紹介いただきました。

野口る理さん(小諸にもいらっしゃっていました)が読んで下さっています。

 

http://spica819.main.jp/yomu/3573.html

 

 

なお、同じ「よむ」のコーナー6月28日には前北かおる句集『ラフマニノフ』から神野紗希さんが

鑑賞を行っております。

こちらもなかなか巧みな鑑賞です。

http://spica819.main.jp/yomu/1238.html