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雑詠(2019年4月号)

ゆるやかに道曲がりゆく枯木立		山内裕子
庭園の外へも銀杏散り続く
被服廠跡の公園銀杏散る
排気塔の蒸気濛々冬の朝
草揺れて笹鳴少し遠ざかる
心中を聞かなくなりて近松忌		津田祥子
笹鳴のここにも聞こえ帰り道		玉井恵美子
ストーブにおでん鍋ある定食屋		田中 香
沼よぎる寒禽なにか言ひ残し		梅岡礼子

課題句(2019年3月号)

「目刺」  山内 裕子選

奥歯もて頭ㇻを嚙んで目刺食ぶ			櫻井 茂之
頰刺のあんぐり開けし口燃ゆる
目刺干されたり猫背の一尾あり			黒田 冥柯
目刺焼く煙朝市盛り上げて			村田うさぎ
早夕餉会話少なく目刺焼く			園部 光代
海ちかく住まひ目刺もたまに焼く		本井  英

コンバインのライトが帰る刈田道   磯田和子

 季題は「刈田」。「コンバイン」は本来「複合」の謂いであるが、ある時期から日本では稲の「刈り取り」と「脱穀」を一台でこなすトラクター形農機具のことを指すようになっている。したがって筆者としては「コンバイン」だけで充分秋の季題たりうるものと認識しているが、掲出句のように従前からある「刈田」をいう季題のもとで詠むというのも、言葉の過渡期にはあっては然るべき手立てであろう。

 一日中、朝から働きづめの「コンバイン」。勿論作業に携わっている農民も疲れていることだろう。しかし、天候の状態などを勘案すれば、今日は日が暮れるまで野良で働かざるを得なかったのであろう。真っ暗な農道をゆっくり下っていく「コンバイン」の「ライト」。その仄暗い光りの中に、疲れと安堵が見える。(本井 英)

雑詠(2019年3月号)

コンバインのライトが帰る刈田道		磯田和子
アーケードの出口混み合ふ秋時雨
きちきちの野路の竪穴式住居
葛の蔓花ごと垂れて四ツ谷駅

キャンパスを二人乗りして小六月		園部光代
湖面を渡つてきたる時雨かな			小沢藪柑子
林中のひよろと伸びたる茶にも花		山内裕子
小春日のトウノ当尾の仏供華に蝶		柳沢木菟

主宰近詠(2019年3月号)

はれがまし  本井英

小諸・富山 三句

消火器の赤のきはだち庵の冬 ぎくしやくと融雪栓の噴きはじむ 鰤待ちて沖にしづかに定置網 菰巻に顔を寄すれば香りけり 明るさや時雨やどりの池ほとり





櫨の実のわつさわつさと生りきそひ

花八手菌糸のごとくたくましく

海苔篊をすり抜けてくる風ぬるし

小ぶりなる防災倉庫島の冬

泉水にやつて来てをり都鳥





ワイパーが拭へば次の霙かな

水仙や腓の日ざし楽しさに

顔見世や舞妓まじりにはれがまし

顔見世の役者が朝の食堂に

ボロ市の真只中に住まひせる





混ぜ垣やまぬかれがたく茶は花を

掃き寄すや銀杏黄葉の粉々も

充電のごとく冬日に身をさらし

ひとり来て心はなやぎ冬紅葉

柚子三つ惑星のごと湯にうかび