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寒牡丹女と生れきて老いし 岩本桂子(2013年6月号)

季題は「寒牡丹」、「冬牡丹」とも言い、初夏に咲くべき「牡丹」を園芸の技術で真冬に咲かせ、人々を珍しがらせるところに意味を置いている。言い方は似ているが「葉牡丹」はまったく別の、「観賞用キャベツ」。掲出句は「寒牡丹」の有りようが、どこか「女性の生き方」に通じるものが有ると言っている。作者自身の半生を振り返ってみて、「女として生れ、女として生き、女として老いる」その「はかなさ」あるいは「頼りなさ」、あるいは「献身」が「寒牡丹」の定めに似ていると言っているのである。本当のところは、男である筆者には思い及ばぬものが有るに違いない。しかし「及ばずながら」想像だけは出来るような気のする一句であった。(本井 英)

主宰近詠(2013年7月号)


かく降れば  本井 英

小綬鶏のけたたましきも百千鳥

浦島草綸を大きくふりかざし

巣立ち燕ぞぱつちんと轢かれしは

へろへろと蝌蚪の伝令潜りゆく

ボートレース直前ボート後じさり



コックスを投げ込みボートレース了

庭遅日関守石のなんと小さく

店奥のテレビは競馬藤の昼

暗渠口出ては入りてはつばくらめ

搾りたくなるほど雨の八重桜



小流れを二手に岐ける杉菜島

翔るものつばくろばかりかく降れば

開かりて咲きてその名もさはふたぎ

惜春や一駅だけの大師線

ヤキソバに口を汚して春惜しむ



芍薬の蕾こつんと色いまだ

昼すぎてよく泳ぐなり五月鯉

きりこりと村を明るう遠蛙

足跡は長靴葛は玉を巻き

十五六ならび養蜂箱多忙

主宰近詠(2013年6月号)


さらに黄に  本井 英

春時雨湖東の町は濡れわたり

島の第一夜虫出とどろきて

虫出や湯壺は川の高さなる

車庫裏で出くはしたるは雉の夫

棒一本突き立ててある蝌蚪の紐



初蝶のことを告げたく歩を早む

一昨日の初蝶よりもさらに黄に

灯台へ行く馬の背の風椿

惨劇のごと山頂の落椿

湯ヶ島より湯ヶ野恋しや菫草



三角草咲くには咲きてやや小さし

ほぐれ出て花咲かんずる青木かな

はくれんや弛みはじめて綻びず

春蘭に梅ちりさらに蘂がちり

呑みあふれたる春水に耳濡らす



剪定を待ちかねてをる梨の棚

藪巻を解かれて風をよろこぶよ

紅梅の蘂の流星群のやう

閉ぢてゐて瞼の甘き朝寝かな

針桐の針の(ハザマ)の芽吹きかな

課題句(2013年5月)

課題句「鯖」		磯田和子 選

海の色引つぱり上げて鯖跳ねる		皆川和子
鯖一尾味噌煮塩焼酢でしめて

釣果とてはちきれさうな鯖呉るる	飯田美恵子
敷笹に鯖の目の張り胴の張り		前田なな
開け放つ風の厨や鯖に立ち		梅岡礼子
鯖焼くやだん〱海のあを消えて		櫻井茂之

課題句(2013年4月号)

課題句「春風」		前北かおる選


久しぶりにスカートはいて春の風	冨田いづみ
春の風しあはせさうに話すかな

春風の丘に広げしバスケット		三上朋子
春風に見えずなるまで見送れる		藤永貴之
地下鉄を出で春風に包まれし		田中香
春風にまだ封印を解かぬ事		矢沢六平