銀世界 本井 英
石蕗の黄のゆつくり褪せてゆける日々 クリスマスソング水族館に充ち サンタ帽かぶりてアシカショー司会火炙台磔台と冬ざるる 酢茎買うて今井食堂にも寄りて鈴ヶ森刑場跡
雁木うち全但バスの停留所 雁木みちへ有平棒は光蒔き 列車着けば雁木を人の通りけり 騎馬像を遠巻きにして雁木かな 雁木出はづれて橋あり銀世界
先住は俳僧とかや枯芭蕉 病室の窓東向き開戦日 帰り行く見舞ひの妻に日短 しやつくりも副作用とよ冬日和 クリスマスツリー点滅夜が明ける
カーテンと玻璃の間の聖樹かなノリさんにばつたり出逢ひさうな枯野 機関区のところどころの枯葎 水仙や引込み線はトンネルへ 去年今年身に病変を抱きながら悼 崎山野梨壷さん