主宰近詠(2018年3月号)

銀世界     本井 英

石蕗の黄のゆつくり褪せてゆける日々

クリスマスソング水族館に充ち

サンタ帽かぶりてアシカショー司会

     

鈴ヶ森刑場跡

火炙台磔台と冬ざるる 酢茎買うて今井食堂にも寄りて




雁木うち全但バスの停留所

雁木みちへ有平棒は光蒔き

列車着けば雁木を人の通りけり

騎馬像を遠巻きにして雁木かな

雁木出はづれて橋あり銀世界




先住は俳僧とかや枯芭蕉

病室の窓東向き開戦日

帰り行く見舞ひの妻に日短

しやつくりも副作用とよ冬日和

クリスマスツリー点滅夜が明ける




カーテンと玻璃の間の聖樹かな

  

悼 崎山野梨壷さん

ノリさんにばつたり出逢ひさうな枯野 機関区のところどころの枯葎 水仙や引込み線はトンネルへ 去年今年身に病変を抱きながら