池塘のやうや 本井英
母疾うに亡き母の日を姉弟 湾内の卯波を熨して豪華船 雲割つて高度下げれば卯波たつ 柿の花散らし流してけふの雨 賀茂祭楽(ガク)といふものなきままに
先駆けの乗尻六騎日焼けたる 鷺しらず葵祭の川なかに 新茶古茶新茶古茶なほ古茶の日も 古茶啜る音のながきを憎みけり 恭順の一身丸め根切虫
抛られて鯉口中へ根切虫 吾が断ちし根ツ切虫の天寿かな 葉はさらに風に応へて花楝 虫喰ひが池塘のやうや蕗広葉 干あがつてしまひさうなり莕菜咲き
佳きお庭にはクローバー品下り すでに順路せばめそめたり萩若葉 春蟬の空蟬なるはかく小さく 夏潮が引けば甘藻は横たはり 夏潮の引きて貽貝の露はにぞ