主宰近詠(2017年8月号)

池塘のやうや    本井英

母疾うに亡き母の日を姉弟

湾内の卯波を熨して豪華船

雲割つて高度下げれば卯波たつ

柿の花散らし流してけふの雨

賀茂祭楽(ガク)といふものなきままに




先駆けの乗尻六騎日焼けたる

鷺しらず葵祭の川なかに

新茶古茶新茶古茶なほ古茶の日も

古茶啜る音のながきを憎みけり

恭順の一身丸め根切虫




抛られて鯉口中へ根切虫

吾が断ちし根ツ切虫の天寿かな

葉はさらに風に応へて花楝

虫喰ひが池塘のやうや蕗広葉

干あがつてしまひさうなり莕菜咲き




佳きお庭にはクローバー品下り

すでに順路せばめそめたり萩若葉

春蟬の空蟬なるはかく小さく

夏潮が引けば甘藻は横たはり

夏潮の引きて貽貝の露はにぞ