素魚の笑顔と見えてまた悲し 百舌鳥
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夏潮6月号 雑詠より
季題は、素魚(シロウオ)で春。角川歳時記の白魚(シラウオ)の項で「踊り食いするハゼ科の素魚とよく混同されるが別種」と説明されているとおりサケ目シラウオ科の魚である。
素魚の体は透き通っており、目の黒さが印象的である。その顔があたかも笑っている様に見え、作者は愛らしく思った。しかし、その刹那、悲しさを覚えた。なぜなら、その素魚を自分が今から食べるからである。
そもそも、私たちは、牛や馬や豚や何やら、生きているものを見て、可愛い、愛らしいと思っても、旨そうだとは思わない。
踊り食いという食べ方が、この句を生んだのだろう。