うらゝかや礼拝堂の鍵開くる 永田泰三(2013年9月号)

 季題は「麗か」。春のよく晴れて暖かな日射しを感じさせる季題。「長閑」という季題もあるが、そちらはやや気分的に「のんびり」した感覚を伴う。「礼拝堂」はキリスト教における祈禱の場所。「聖堂」とは厳密には異なるが、現在の日本語のおよその感覚では、どちらも「教会」を脳裏に描いていいだろう。その「礼拝堂」の「鍵」を預かっている人物は牧師さんとか神父さんとか、いずれ宗教家と呼ばれる方。明るく、暖かい春の朝、「ガチャッ」と鍵を廻して重い扉を「ギーッ」と開いた瞬間である。薄暗い堂内は、表に比べてまだひんやりした空気を漂わせている。それでも、さすがに「春」。真冬のそれとは違う、希望に溢れた何かを感じさせるものがあった、というのである。「四旬節」から「御復活」にかけての日々が想像される。(本井 英)

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