籾摺機止めて昼餉のお味噌汁 阿久津稜子(2013年3月号)

季題は「籾摺機」。『ホトトギス新歳時記』の首題では「籾磨」とあるが、傍題の「籾摺臼」では「摺」の字を使用している。「籾摺」は籾の殻を剥がし取って玄米にすること。昔は手動式の臼を回したりしたが、現今では電動の機械になっている。そんな作業を朝から続けていたのが、漸く昼餉時となり、機械を一旦止めて食事を摂る時刻になった。農家の土間から埃を払いながら茶の間に上がってきた農夫。機械の音も止んで、柔らかく湯気を立てているお椀に向かったのであろう。
一句の世界は何の変哲も無い平凡な日常であるが、如何にも安心して眺められる一句の「調子」が好もしい。「お味噌汁」の措辞も気取りが無くて一句の雰囲気に叶っていよう。(本井英)