寒くごつつく 本井英
炭斗を提げ五六歩は傘をさし
塩引にしくしくと食ひ込む刃
風音ははるか上空日向ぼこ
磴落葉ここに寛永三馬術
寒釣の綸のきらきらきらきらす
萬年橋寒くごつつく架かるかな
都鳥ものねだる癖誰がつけし
忘年会幹事様子の良い男
川涸れて堰堤はただそそり立つ
涸川へ駆け下り駆け上るかな
青石をゆゆしく渡し池涸るる
ボーナスの出る日の講義朗々と
栴檀のすつからかんに枯れはてし
切干の笊の角度が日の角度
紅もむべなり海棠の帰花
枯木山背負ひ鎌倉権五郎
佇めば甘えるやうに笹鳴ける
枯れ枯れてもういけません男郎花
積み上ぐるキャットフードも年用意
すれ違ふ電車がらがら年の夜