主宰近詠(2013年3月号)


寒くごつつく        本井英

炭斗を提げ五六歩は傘をさし

塩引にしくしくと食ひ込む刃

風音ははるか上空日向ぼこ

磴落葉ここに寛永三馬術

寒釣の綸のきらきらきらきらす




萬年橋寒くごつつく架かるかな

都鳥ものねだる癖誰がつけし

忘年会幹事様子の良い男

川涸れて堰堤はただそそり立つ

涸川へ駆け下り駆け上るかな



青石をゆゆしく渡し池涸るる

ボーナスの出る日の講義朗々と

栴檀のすつからかんに枯れはてし

切干の笊の角度が日の角度

紅もむべなり海棠の帰花



枯木山背負ひ鎌倉権五郎

佇めば甘えるやうに笹鳴ける

枯れ枯れてもういけません男郎花

積み上ぐるキャットフードも年用意

すれ違ふ電車がらがら年の夜