主宰近詠(2012年10月号)


小諸好きよと          本井英


赤潮の覆るとき赤あはく

青唐辛子(アオトウ)をざつと炒める湯気辛し

灯ともして朝顔市に朝の雨

橋わたるとき夏潮の香の急に

申し訳ないがグラジオラス嫌ひ




岩面(マル)をたどりて登る山

一昨年の人とまた会ひ登山小屋

うな重を妻に奢りて落着す

釣り上げて鰻の腹の黄の濃ゆし

水打ちて吉原いまも婀娜(アダ)の街




誇らかに天辺に咲く凌霄花

校庭を流れはじめし夕立かな

水打つて小諸に棲むもよからんと

歩ゆるめず暑いですねと追ひ抜ける

炎天の小諸好きよと歩くなり




瀧風と別れ瀧音と別れけり

きちかうの咲いてしまへば寛げる

たわたわと(ザイ)もはづれの青胡桃

海月見下ろす(フナバタ)の二人かな

立葵やさしき色の咲きのぼり

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