働いて暮れて西鶴忌なりけり 前北かおる(2012年9月号)

西鶴忌は陰暦の八月十日。秋の最中である。直接その人のことを知らない忌日季題というのは、宗教家であれば、その教義や為人、文学者であれば、その作品世界などをそれとなく詠み込むことが多い。この句はそういう点でも上々の作で、西鶴小説の経済的方面、恋愛的方面の世界を、どれとは具体的に言わぬながら感じさせてくれる。それでいて作者本人が常識的な日常生活を送るなかに、どこか非日常への「憧れ」のようなものまで感じさせてくれる。 俳人というものは不思議なもので、こうして忌日の句を詠みながら、過去の世界に多くの知己を得ていってしまう。(本井英)

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