閑かのよけれ 本井英
けさも又けふの莟をあさざかな
自転車で麦藁帽でがに股で
ちぬ釣りのうしろに立ちて夕日見る
餌をねだる
咽 まつ赤や鴉の子
子鴉の猫のやうなる甘え啼き
空梅雨や月命日の花剪りて
訪ひてけふのついりの御泉水
岩煙草風がとどけば応へけり
五六十幹おほよそが今年竹
竹皮を長靴ほどを脱がずあり
さみだれの
閑 かのよけれ鎖樋(
虎尾草のこんな小虎のあらまほし
犬小屋はどれも妻入なめくじり
風呂桶と壁の細闇なめくじら
梅雨菌せせればほのと烟吐く
寺領ふかく棲みて在家や竹落葉
信号はいつも点滅ほととぎす
溝萩の花はやしとは去年も言ひし
深刻に話すや日傘傾げあひ
籐椅子をとなりに寄せて聞き上手