名も佳けれ 本井英
白鳥の翔くる項に力充ち
白鳥の哀訴の充つるみ空かな
屋根の雪チーズの如く垂るるかな
しづりては煙れる雪や杉生黒
沖とほく大島が見え雪が見え
国宝の城とて小ぶり春の月
一城や行く水遠く暮遅く
釣具屋の裏の水路も鱵来と
建国の日の蜑路地の日章旗
人皇と呼びて讃へて建国日
茹でこぼす湯にもうすうす若布色
若布乾く音の軽さの翌朝
日はさらに風も叶ひぬ若布干す
春寒の猿山や悶着もなく
ホ句始め山河いとしと思ふべし
江戸城に濠の幾面
水温む
下萌えて第三駐車場ひろし
早春の入日に染まり河の町
笑ふなる愛鷹山は名も佳けれ
二
月のおまけのひと日雪しづか
主宰近詠(2012年5月号)
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