俳誌「古志」青年部年間作品集2012
暫く、「汐まねき」のコーナーにおいて、他誌や他の作家の方の作品をご紹介するのを怠けていた。
今回は、他の雑誌の「青年部」の作品集をご紹介する。
「古志」は長谷川櫂氏が1993年に創刊。その後、2011年に大谷弘至現主宰(1980年生)が30歳で主宰を継承。
主宰の年齢から察しがつくとおり、現在はこの「青年部」メンバー/出身者が運営の中心を担われている。
ここに登場する21名の中にも編集やHP担当など数多くの仕事を担当している模様。
40歳以下の会員数21名とは、当「夏潮」と同じ程度の規模であろうか。
御一人ずつ作品を、生年月日と共に紹介させていただく。
●イーブン美奈子(1976年生)
早回ししてゐるごとく蟻の道
●石塚直子(1987年生)
夏痩の膝を抱へて眠りをり
●泉経武(1965年生)
鱗雲テニスボールが壁を越え
●泉裕隆(2001年生)
鮭上る川真黒になりにけり
●市川きつね(1987年生)
触れてみて桜と気づく新樹かな
冷ややかに山をのみこむ山の影
●大塚哲也(1981年生)
大川を諸国の落ち葉流れゆく
●岡崎陽市(1972年生)
七夕の河のむかうに灯がともり
●川又裕一(1971年生)
陶然と唐銅あをむ春の雨
●関根千方(1970年生)
這ひ這ひに皆ついてゆく恵方かな
●高角美津子(1973年生)
青梅や窓開けはなち朝稽古
●高平玲子(1969年生)
風鈴をも一度鳴らし仕舞ひけり
●竹下米花(1974年生)
卒業の子に珈琲を淹れてやり
●竹中彩(1976年生)
終はりなきメールを交はす夜長かな
●丹野麻衣子(1974年生)
花あまた落として椿軽からん
鮎生簀滝の流れに打たせあり
●辻奈央子(1977年生)
宵山や亀もそはそはしてをりぬ
●藤原智子(1976年生)
秋深し夫が絵本を読み聞かす
●前田茉莉子(1984年生)
ふらここの鎖ピンクに塗られをる
●森篤史(1990年生)
ペン胼胝の消えぬ指先大晦日
●山内あかり(1968年生)
ふるさとに雪降り続く雑煮かな
●山本純人(1977年生)
お隣と文句言ひ合ふ猫じやらし
●渡辺竜樹(1976年生)
霏々と雪リフトくるりと帰りけり
「青年部句会」は長谷川前主宰により、かなり厳しく指導がなされていたようで、句のリズムに緊張感が見られる。
また、各人を通してある一定のリズムで句が並んでおり、前主宰の指導が行き通っている感じを受けた。
ただし、「無難に上手い」俳句から、まだまだ「個人の詩」まで昇華し切れていない印象を受けた。
「無難に上手い」とは、言いたいことが思わせぶりで分りやすい。具象性が足りない句が多い印象を受けた。所謂「雰囲気美人」俳句が多かった。
しかしながら、若い主宰を囲んで同世代のメンバーが切磋琢磨している中で、どのような個性が生まれるか楽しみにしたい。
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当作品集は、「古志」HPから、購入することも可能である(1冊500円)。
http://www.koshisha.com/?page_id=6
是非、当「第零句集」シリーズの作品と見比べていただければと思う。
〆