タンカーの上に寝そべる秋の雲  香 (泰三)

  大試験会場で、季題と向き合いながら仕事に励んでいた泰三です。皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

 季題は、秋の雲。虚子編新歳時記では、「冬の雲の如く堅くもなく、夏の雲の如くいかめしくもない。絶えず流動して、人々を失望させたり、喜ばせたりすることが多い。」と解説されているが、後半部分の「人々をうんぬうん」という文章は誠に面白い。はたして、人々は秋の雲を見て、失望したり喜んだりするのだろうか。

 さてこの句。タンカーとは、石油を運ぶ船で横にだだっ広い船である。そのタンカーの上にこれまた広い秋の雲があたかも寝そべっているかのようだ。こう言われてみれば、あたかも海の上にタンカーが寝そべっているように見え、そしてその上に秋の雲が寝そべっているようにも見える。そして、そんな雲の上に自分も寝てみたいなあなどと、楽しい空想もしてみたくなる。

 「タンカーの上に浮かべる」では唯の報告。「寝そべる」と言葉をせめたことで、晴れ渡った日の長閑な秋の海の景色が目に浮かぶ句と成っていよう。

 

タンカーの上に寝そべる秋の雲  香 (泰三)” に1件のフィードバックがあります

  1. ろく
    うんうん、賛成。「寝そべってみたし」という感想を抱かせるところが句を詩たらしめているんだよね。
    返信

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