主宰近詠(2012年1月号)


秋深し        本井英

登り来てすこし広さや小鳥網

椋の実を欲しやと鳩が電線に

梧桐アオギリの実の揺り籠をなつかしむ

ねび鯊のかかればイトの左右せる

袋のぞきあうて銀杏拾ふかな




初鴨に水平線のぎざ細か

初鴨の電話受けつつ式部官

シャを抜けてべつたら市を泳ぐかな

抜きあげて土ゆり落とし落花生

半夏生枯れむとすなり穂は疾うに




菱の実のまだ青々とその形

朝日つき抜けて明るき一位の実

諏訪大社上社前宮 二句

うすうすと黄葉すすめて神の梶

三之柱四之柱は色草に




折をりに仰がるる空秋深し

老人に菊花展あり昼酒あり

菊晴のにはかに昃る川面かな

鯊の潮差し込みきたり枕橋

ハムカツに来ては追はれて秋の蝿

猿曳の猿に見せたる真顔かな