秋深し 本井英
登り来てすこし広さや小鳥網
椋の実を欲しやと鳩が電線に
梧桐 の実の揺り籠をなつかしむ
ねび鯊のかかれば
綸 の左右せる
袋のぞきあうて銀杏拾ふかな
初鴨に水平線のぎざ細か
初鴨の電話受けつつ式部官
社 を抜けてべつたら市を泳ぐかな
抜きあげて土ゆり落とし落花生
半夏生枯れむとすなり穂は疾うに
菱の実のまだ青々とその形
朝日つき抜けて明るき一位の実
諏訪大社上社前宮 二句
うすうすと黄葉すすめて神の梶
三之柱四之柱は色草に
折をりに仰がるる空秋深し
老人に菊花展あり昼酒あり
菊晴のにはかに昃る川面かな
鯊の潮差し込みきたり枕橋
ハムカツに来ては追はれて秋の蝿
猿曳の猿に見せたる真顔かな