モノレール枯木の中を辷り出す 大山みち子

 季題は「枯木」。葉を落として幹と枝ばかりになった樹木である。「裸木」という季題もあるが、こちらにはやや情感が纏わり付く。「モノレール」は「一本」のレールを跨いだり、ぶら下がったりする仕組みの輸送手段。多くは都会でもお洒落な「乗り物」のことを呼ぶが、蜜柑山や山葵田などを縦横に巡って「荷物」を運ぶ軽便な小型運送手段も「モノレール」と呼ぶ。掲出句はおそらく前者であろう。「辷り出す」の措辞は「小型の運搬手段」には相応しくない。木立越しのやや斜め上方に「モノレール駅」が見えるのであろう。地上数メートルの高さに設置された「駅」にモノレールの車両が停車している。発車時間が来て、音も無く発車する「モノレール」。地上数メートルの高さには「枯木」の「幹」と「枝」ばかりである。そんな「縦の線」の密集の中を「辷り出す」近代的な「モノレール」の車体。不思議な調和が感じられる景となった。これも大切な「写生」の「眼」である。(本井 英)

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