主宰近詠(2025年7月号)

お海苔ぱりぱり     本井 英

山麓の風大切の飼屋かな

掃立の毛蚕くろぐろと可愛らし

掌に重さとてある蚕かな

鬱勃と村中(ムラナカ)にあり桑畑

亡き妻が植ゑけん薔薇なほ紅き

ねずみ取りなど売り黴の荒物屋

蘖のゆたの緑の銀杏かな

竿先をきゆんと引き込み鱚ならめ

鱚釣に穴子が釣れてひと騒ぎ

大鱚のうす桃色にくねるとき


船頭もときどき鱚の絲垂れて

散り溜まりつつ芍薬のなほ白し

散り尽くしたる芍薬を掃きもせず

龍鱗を這ふ青蔦の途なかば

薄暑また佳し旧邸の公開日

籐椅子をゆつたりと置く畳かな

熊蜂のぶら下がる零れては翔ぶ

おむすびのお海苔ぱりぱり雲は夏

軽暖や老いの膚へに心地よく

蘆端正に蒲は屈託なく茂り

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