蛍袋蟻がわんさとひそみゐる 美恵子 (泰三)

 季題は蛍袋で夏。ちなみに蟻も夏の季題であるが、この句の主たる季題は蛍袋であろう。この花、その名の通り袋状の紫色の花をいくつもつける。

 蛍袋はちんまりとしたかわいらしい花である。この花を見つけた作者は何とか一句に仕上げたいと懸命に見ていた。小さな袋状の花の中までのぞきこみまでしてみた。すると、その中には蟻がわんさと潜んでいるではないか。しめたと思い、この瞬間を一句に仕上げた。もちろんこの句は、蛍袋の持つ本情とはずれていよう。ずれを楽しむ。それも俳句ならではの楽しみ。そんなことが思わされた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください