三千風忌 本井 英 枯れ枯れて色のぬけたる烏瓜 リヤカーの立てかけてある落葉かな 彼の訃を新年会の人伝に アロエ咲かせ防潮堤の内に棲む 枯芝に下萌滲みそめたりな トンネルで潜りせし木の芽山 梅の蕾にうるうると雨雫 谷底の梅林に日の及びそめ 梅林の日溜りに額焦がしをり 目白来てわが梅ヶ枝ととりすがり
そこいらにぱらりぱらりといぬふぐり 野焼の火点けてまはりて上機嫌 春水や躙り下りて奏でたり けふばかり賑はふ堂宇針供養 針供養果て境内は残照に 三千風忌西上人も臠はせ 思ひ出づる時彦秞子三千風忌 熨斗蘭の実とよ掌あたたかき 漕ぐやうに菠薐草を茹でにけり 麗かや高架電車はことさらに