主宰近詠(2023年7月号)

小園逍遙   本井 英

半夏生その一刷毛のはじまりし

仰ぐ薔薇見下ろす薔薇とありにけり

ちりちりと花穂もすでに半夏生

河骨の黄に赤手蟹ことしまた

河骨の水へと闇の解けそめし

半夏生の飛び移りたる白の色

十薬の茎伸びきりてふらふらす

色得つつありて式部の蕾たり

ついりせしよと磯鵯の高らかに

赤手蟹の爪先は白梅雨に入る

夏椿雨をよろこび幹ひからせ

濃淡や散りひろごりて海紅豆

風車なして白花夾竹桃

十薬の八重咲きなれば引かれずに

沢瀉の若葉ながらのそのかたち

吾亦紅若葉濃うなる雨の中

ラティス張り了へて薔薇植う心組み

誇らかに白を掲げて半夏生

半夏生えやみのごとく白とばし

若葉雨過ぐテラコッタ生乾き

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