遺愛の庭 本井 英
青々とつやつやと新松子なる 新松子にそだつ緑の雨雫
大森はむかし郊外椎の秋 その画家の遺愛の庭の木守柿 木瓜の実のいびつも画家の愛しけん 上品に浅きなぐりや縁の秋川端龍子旧邸 四句
この庭の「木曽路」が好きや秋はさらに 姫沙羅の木肌あかるし小鳥らに 山雀はすこし濁声可愛らし 境内にキッチンカーや柿の寺
咲きつぎて茶の花は褒められもせず 野良道に小さき乗 越草の花< 谷戸池へ風呼んでいる荻の指 長旅の疲れをいやす浮寝とも お行儀に大根の株まだ幼な
峠閉づる大きなゲート草紅葉 草紅葉峠の茶屋は疾うに閉ぢ 実千両色づく前の変な色 をみならに触れられてをり蘇鉄の実 女郎蜘蛛君臨したり雨の空
主宰近詠(2022年1月号)
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