主宰近詠(2011年10月号)


     真裸の水    本井英

撮り鉄の一列に佇つ青田かな

枝高く交はし緑蔭ドームなす

出くはして小綬鶏一家草茂る

裏返し干してズボンや立葵

潮に踏み込んで水無月三日かな



沖合に侍する一艇海開

日盛を刳りて深き渋谷川

ぱちぱちと音の軽さも作り瀧

作り瀧ながらかすかに風もそひ

駅頭に図抜けてのつぽ盆の僧



青鷺の歩みてくぐり石の橋

山ほどの言ひ分抱いて妻昼寝

箱庭の触るれば回る水車かな

箱庭の家鴨の向きをすこし変へ

撮影会日傘も安つぽかりけり



そのあひだ日傘あづかり差す男

境内に矢印小さく登山口

みすず飴の甘さあのまま日の盛り

威銃淺間見えたり見なんだり

真裸の水の湧きくる泉かな