真裸の水 本井英
撮り鉄の一列に佇つ青田かな
枝高く交はし緑蔭ドームなす
出くはして小綬鶏一家草茂る
裏返し干してズボンや立葵
潮に踏み込んで水無月三日かな
沖合に侍する一艇海開
日盛を刳りて深き渋谷川
ぱちぱちと音の軽さも作り瀧
作り瀧ながらかすかに風もそひ
駅頭に図抜けてのつぽ盆の僧
青鷺の歩みてくぐり石の橋
山ほどの言ひ分抱いて妻昼寝
箱庭の触るれば回る水車かな
箱庭の家鴨の向きをすこし変へ
撮影会日傘も安つぽかりけり
そのあひだ日傘あづかり差す男
境内に矢印小さく登山口
みすず飴の甘さあのまま日の盛り
威銃淺間見えたり見なんだり
真裸の水の湧きくる泉かな