病を主 本井 英
通院の日々のふたたび梅雨寒し 梅雨寒のいつまで昏れぬ川ほとり 燕翔るロープワークの図をなぞり 色合ひの近親づくめ立葵 十薬の葉をこそ賞づれ濃紫
東京から来し人々に梅雨晴間 五月晴小型機脚を出したまま 梅雨晴や病めば病を主とし 老鶯のこまぎれながら途切れなく 尻の肉落ちれば硬し涼み石
塗りつけし白の重たし半夏生 夏雲へねぢれ消えたり出発機 刃もてとげし本懐虎ケ雨 鬼王も団三郎も虎ケ雨 こみあげて堰を切りたり虎ケ雨
語りきし果ての号泣虎ケ雨 虎ケ雨化粧坂にも降りおよび 男は死に女は生きて虎ケ雨 虎瞽女の泊り泊りの虎ケ雨 いまに売る虎子饅頭虎ケ雨