かけがへのなき人々 本井英
白菜の畝に居並び首 級めき 紫に紅に下萌えにけり 犬ふぐり拗ね者もなく咲きそろひ 知らぬ人が春一番と言つて過ぐ 池普請途中で抛りだしてあり
この里に幾観世音春時雨 八橋は立ち入り禁止雪残り 春泥を跨がんとする膝と腰 磯原におつかぶされる余寒かな
旧正をかけがへのなき人々と 春の人かな名乗り合ひ笑まひ合ひ 犬ふぐりおほよそ閉ぢて雨近し 離り見て梅林は色やはらかき 雨の糸受け入れてをる古巣かな夏潮新年会 二句
雨が打ちはじめ白梅散りはじめ 雨に濡れてさらに明るし花菜畑 花菜畑咲きむらあるは一樹ゆゑ 名草の芽よろこぶほどの雨注ぐ モノレール出発あたり霞みつつ 福寿草の黄色のどこか緑おび