主宰近詠(2019年4月号)

春を思はしむ   本井英

足裏にひつつく床や寒稽古

ホワイエにダンス部の寒稽古かな

寒稽古へドアをバタンと出て行きし

犬山稽古会 八句

黄鶺鴒の方ががつしりしてをるよ 三十三才低くか黒く川跨ぐ




鉄橋の吼えては止みて寒の闇

暁の浮寝の陣の黒とのみ

鴨の陣いくつ犬山頭首工

鴨の陣解けと朝日が促すよ

伝令のごと鴨の陣抜け出せる




カンバセ顔にそひてただやう息白し

鴨は鴨鵜は鵜でくらし頭首工

明治村 二句

白いもの落ちて来さうや明治村 寒ざむと三八銃を展示せる 切山椒の色みな春を思はしむ




くすぐりの少し度が過ぎ初芝居

日脚伸ぶ日々を閑散スキー場

出勤のホステスたちに日脚伸ぶ

マフラーに顎をうづめて憎みけり

蛇口ひねれば寒の水棒状に