田はあをあを 本井 英
山畑に葉もの生りもの夏菊も 黒蝶の羽音聞こゆるかと見遣る 緑蔭へ小げら小声をこぼしては 野鯉釣るとよ緑蔭に小椅子置き 甥が来てくれてうれしきビール注ぐ
冷麦と青マジックで書いてある 冷麦にやさしき色の二三条 波乗りに良き波来ればたてつづけ ここにまたフラ・スタジオや凌霄花 つきささるやうに翡翠対岸へ
海原が過ぎ去つてゆく昼寝かな 十薬の葉に錆色の行きわたり 沢瀉の白がちらちら田はあをあを 土用入わが健啖を恃みとし 夏の雨吸ひてやすらかアスファルト
香水や耳たぶうすく生まれつき 山かげのここの清水も諏訪の神 風わたりはじめし雨の青胡桃 青胡桃三個づつ二個づつもある 土砂降りにほとびはじめし蚯蚓かなこもろ・日盛俳句祭五句