主宰近詠(2017年2月号)


勤労感謝の日  本井英

烏瓜に双眼鏡のピント合ふ

厚物に出口入口無きごとく

観覧車黄葉へ降りてきて迅し

紅葉川の対岸ひろく貯木場

落ちつくし敷きつくしたる木の実かな




柊の花や門灯切れたまま

皇帝ダリア高きを以て貴しと

山越えて雨が来るころ蕎麦を刈る

お酉様お店持ちたるうれしさに

綿虫を摑まんとしてをるらしき




雪が来るよ雪が来るよと瀬の走る

京へもどる最終バスや時雨れつつ

サンライズ瀬戸小夜時雨くぐり抜け

藪茗荷の実とは淡水黒真珠

山茶花の散りちらかるといふばかり




わが息のおよぶ近さの冬桜

離陸機が冬霞より這ひ出でし

グエンさんコさん勤労感謝の日

寒禽の枝渡るあり攀づるあり

引き裂いて鷲の喰らへるもの真つ赤

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