日盛をバイク元気に出て行かれ 西岡あやめ

 季題は「日盛」。一日のうちで、最も暑い盛りの、正午から午後三時頃までである。つまり暑さを厭う人々からは敬遠される時間帯。それが季題となっているところに大切な意味があろう。普通なら「暑くて、暑くて」何もしたくない状況でも、心持ち次第では楽しくも過ごせようし、これもまた「造化の神」の我々への送りもの(「季題」は全てそうである)と思えば、そこにいくばくかの「趣」すら生じてくる。

 一句の味わいどころは「出て行かれ」。つまり「行かれ」に含まれる「尊敬」である。助動詞の「る・らる」には尊敬の意味がある。「バイク」で「日盛」で出て行った人物への尊敬の気持ち、誰か敬意をもって接すべき人物である。もちろん、親でも、先生でも誰でもいい。こんな日盛りの時間に「元気に」出発した人物への敬意が、事故でも起こされなければ良いが、お疲れが出なければよいが、という思いやりをも含んでいる。

 ここまでは解釈。ここからは鑑賞。さて「どんな人物」が「バイク」で出かけられたか。筆者の脳裏には、すぐ「盆経」を上げに来て下さった和尚様が浮かんだ。お経が終わって麦茶などを召し上がりながら、「仏さん」の思い出話などをされた和尚様が、「では」と言って立ち上がられた。今は「日盛ですので、もう少し、こちらでお休みになってから」と申し上げても、和尚様は、「あと何軒かは回らねばならぬ」からと「日盛」へ出て行かれたというのである。

 鑑賞は読者によってさまざまに異なる。しかし、さまざまに連想を呼び起こしてくれる句は、良い句である。

 「バイク、元気に」の省略によって、軽快なリズム感が出たところも見逃せない。(本井 英)

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