夏潮8月号雑詠欄より。
季題は「ふらここ」、ブランコの事。「鞦韆」(しゅうせん)の傍題で春の季題である。ブランコなんて年中あるのであるが、角川俳句第歳時記には、「紀元前七世紀、中国北方の異民族から輸入されたものという。異民族の間では、寒食の節(冬至から105日目)の日に鞦韆に乗って遊ぶという風習があった」と解説される。
さて、この句。ふらここなんて懸命に漕いだところで何のためになる訳でもない。しかし、漕ぎ出すとムキになって誰よりも高く、そして、いつもよりも高く、まさに「宙返りせんばかりに」漕ぎたくなってしまう。春の陽気の中を行ったり来たりしている元気なふらここの姿が目に浮かぶ。