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水に落ち水際に落ち桐の花   田中 香

 季題は桐の花。桐は鳳凰がとまる木として古来尊ばれてきた木。一方では箪笥や下駄の材料として大切にされ、その花の紫は遠くからでもその色と判り親しまれて来た。また、降り溜まった落花の香りも印象的だ。一句はその落花の様子を詠んだものだが、「水に落ち水際に落ち」のリズム感が独特で人の心を捉える。正確にはリフレインではないのに、類似した音が短時間に繰り返されるためにリフレインと同じ効果を上げ、さらに「水」と「水際」という異なる状況に落花している「桐の花」を脳裏に描くことで、その花の質量感と色彩感が、ありありと浮かんでくる。

 こう解説すると計算され尽くした措辞のように思うかも知れないが、そうではない。作者には気の毒な言い方になるかも知れないが、それは不意に「口をついて出てきた言葉」に過ぎなかったのだと思う。その思ってもいなかったフレーズを得たときに「これでいける」と判断した作者の力量は評価すべきである。偶然に近い感じで浮かび上がってくる「言葉」をしっかり摑む訓練を怠ってはいけない。(本井 英)

雑詠(2019年9月号)

水に落ち水際に落ち桐の花      田中 香
大いなる波を生みつゝ代田搔く
茄子苗の花一輪を下げて立つ
兜まづ立てゝ捌けり初鰹

震災を重ねて遠き震災忌       前北かおる
ボタ山の天辺まろし鰯雲       櫻井茂之
些細なる諍ひ麦の飯冷えて      山内裕子
無住寺の門に閂柿若葉        皆川和子

主催近詠(2019年9月号)

病を主    本井 英


通院の日々のふたたび梅雨寒し

梅雨寒のいつまで昏れぬ川ほとり

燕翔るロープワークの図をなぞり

色合ひの近親づくめ立葵

十薬の葉をこそ賞づれ濃紫 




東京から来し人々に梅雨晴間

五月晴小型機脚を出したまま

梅雨晴や病めば病を主とし

老鶯のこまぎれながら途切れなく

尻の肉落ちれば硬し涼み石




塗りつけし白の重たし半夏生

夏雲へねぢれ消えたり出発機

刃もてとげし本懐虎ケ雨

鬼王も団三郎も虎ケ雨

こみあげて堰を切りたり虎ケ雨




語りきし果ての号泣虎ケ雨

虎ケ雨化粧坂にも降りおよび

男は死に女は生きて虎ケ雨

虎瞽女の泊り泊りの虎ケ雨

いまに売る虎子饅頭虎ケ雨

稽古会最終日

志賀高原石の湯ロッジでの久々の稽古会も今日まで。少し疲れましたが、実に楽しい充実した四日間でした。ご参加の皆さまに感謝、今回は残念ながら都合のつかなかった皆さま次回は是非ご一緒しましょう。写真は竜胆平に向かう丸木橋。