「蝌蚪」 辻 梓渕 日向側日影側にも蝌蚪の紐 小沢藪柑子 おのがじし影をなしつつ蛙の子 蛙子の尾をまつすぐに休み居り 藤永貴之 蝌蚪の尾の抗ふ流れありにけり 山内裕子 我が影に阿鼻叫喚や蝌蚪の群れ 永田泰三 ちろちろと影の忙しき蝌蚪の水 前田なな
課題句(2018年4月号)
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「蝌蚪」 辻 梓渕 日向側日影側にも蝌蚪の紐 小沢藪柑子 おのがじし影をなしつつ蛙の子 蛙子の尾をまつすぐに休み居り 藤永貴之 蝌蚪の尾の抗ふ流れありにけり 山内裕子 我が影に阿鼻叫喚や蝌蚪の群れ 永田泰三 ちろちろと影の忙しき蝌蚪の水 前田なな
季題は「吹雪」、吹き降りの雪である。「流線」は正確には物理用語でなかなか難しいが、つまりは、時間軸に沿った、物の流れの軌跡を辿った線で、原則交わらないものという。その「吹雪」の一粒一粒の雪片の流れの線が、左に旋回し、次いで、右に転回するというのである。さらに「左旋右転」は剣法の世界でも使う熟語で、刀を左の振り抜き、次いで右へと転ずる、刀捌きをもいうらしい。
用語的には、耳慣れないものが多く、いまひとつ理解が十分でないながら、広々とした曠野を吹きまくる「吹雪」の雪片が右に左にと、予想を覆しながら渦を巻いているようすが見えてくる。
その理由は、どこまでも一句の調子に差し迫ったものがあるためで、「ぞ」の係結びもすこぶる効果をあげていると言えよう。(本井 英)
流線の左旋右転ぞ吹雪なる 稲垣秀俊 鍬深く打込みけふの葱を掘る 海へ海へ地吹雪の波連綿と 虎落笛コーヒー苦き仮事務所 打橋や弁天島の年用意 小野こゆき 朝寒の仕事場にまづ灯をともす 山本道子 雨もさりながら喪にある寒さかな 岩本桂子 注連飾買うて渡船の列にあり 田中 香
心経唱へ 本井英
ありたけの庭の水仙妻の墓に 風花や志賀の都と名は残り 絵画館の坊主頭に冬日ざし 背に浴びる冬日が味方闘病す アスファルト濡れてまつ黒雪さらに
病室の鏡にぞ雪降りしきる 雪片や綿のやうなるなも混じり 降る雪はヒマラヤ杉を染めはじむ 降りくらむ雪に一灯また一灯 真夜は雪止み一颯の風も無き
I氏より晩白柚の持ち重りせる志 今日干したばかりの大根ま輝き 岬山の眠れば浦曲まどろめる なまこ舟戻るとなればそそくさと 干潮に引かれし水脈の消ゆるまで
冬ざれてアロエもしどけなく撓み 獅子舞がロビーで舞ふも出湯の興 獅子舞の足袋の白さもはしけやし 目白らに遅れまじりて寒雀 著膨れて心経唱へくれをると