日別アーカイブ: 2018年1月2日

駅過ぎて遠花火また見ゆるかな 田中 香(2018年1月号)

 季題は「花火」。「花火」を大きく二つに分けると、「揚花火」と「手花火」に分けられるが、どちらも盆の送り火の一形態として、華やかな中に一抹の悲しみ、憂いを帯びたものである。

 さて掲出の「遠花火」はもちろん「揚花火」。地平線近い低い空に、「ぽっ、ぽっ」と音も無く湧いては消える。作者が自分の乗っている電車の車窓はるかに「遠花火」の揚がっていることに気付いたのは、どのあたりであったのか。今宵花火大会のある町は、どこどこぐらいの想像をしながら、車窓の「花火」を楽しんでいるうちに、電車はとある駅に滑り込み、当然ながら遠方の景色は閉ざされてしまった。乗客の乗降が思ったより時間がかかりながら、発車のベルとともに車窓は動きだし、先程までと同じような、遠く見渡せる場所まで出て来る。もう見えないのかと思って凝視している車窓に、ふたたび音もなく浮かぶ「遠花火」。なんか得をしたような気分に包まれながらガラス窓に額を付けて外を見ている作者の姿が見えてくる。(本井 英)

主宰近詠(2018年1月号)

柿もいでくれもする   本井 英

山梨の(カス)口中にほの甘し

水仙の芽だち袴も行儀よく

鶺鴒や追ひ越しさうに追ひすがり

秋風に鷺の綿羽吹かれどほし

 

木曽三川

河の秋輪中(ワジユウ)浮かびし世々のこと




桑名城
戦はず開きたる城曼珠沙華 菊人形の手摺のにはか造りなる 菊人形の草摺ことに華やかに 灯を消せば菊人形の香ぞ満つる 老木にいたはしきまで新松子




胴の間に積む蛸壺に秋の雨

秋雨にA旗掲げて浮かびをり
「A旗」は潜水中の意の信号旗
ソウル清涼里
尼寺の尼柿もいでくれもする




 
慶州
いかのぼりを野分の空に放ちたる 山雀や一旦藪へ消えてまた 山雀の頰つぺたの薄汚れたる 初鴨のすべなく降られをるばかり