投稿者「祐之」のアーカイブ

祐之 について

「夏潮」運営委員の杉原です。 平成二十二年四月に第一句集『先つぽへ』を出版

「週刊俳句」落選展2011

「週刊俳句」10月30日の「落選展2011」に、前北かおるさんと杉原が応募しています。

この「落選展」とは、角川の「俳句賞」50句応募作品を何の恥じらいも無く世間に公開してしまうという企画です。

ぜひ、ご覧頂きコメントをお寄せいただければと思います。

http://weekly-haiku.blogspot.com/2011/10/236-20111030.html

 

●前北かおる作品50句 「二等星ばかり」

http://weekly-haiku.blogspot.com/2011/10/2010_652.html

杉原祐之作品50句 「常日」

http://weekly-haiku.blogspot.com/2011/10/2010_5691.html

 

杉原の句については『俳句』11月号の選考委員会にて一部取上げられて頂いております。

西原天気句集『けむり』西田書店_(杉原)

西原天気句集『けむり』西田書店

 

西原天気句集『けむり』

西原天気さんの句集。氏は『人名句集 チャーリーさん』を私家版で出版しているが、これが実質の第一句集とのこと。

西原さんは1955年兵庫県生まれ。1997年に「月天」句会に参加し俳句と出会う。

98年から2007年まで「麦の会」に参加、11年春までは「豆の木」に参加。何より2007年に氏が中心として立ち上げた俳句Webマガジンの「週刊俳句」は、インターネットでの俳句の情報発信の中心的役割を担っている。

 

 本句集の特徴として非常に装丁が面白く、色違いの紙を綴り一集をなしている。

このようにポップで手造り感のある句集も素敵である。

 

集中の句の印象としては「自由自在」、主義主張、お題目を唱えるのではなくパイプを吹かしながら(実際に氏はパイプを吸われる)肩の力を抜いて俳句を楽しまれている印象がある。

勿論。言葉の斡旋については十分注意が払われている。私が印を付けた句は「とーんと」出来たような俳句のほうが多かった。ふわふわしたような読後感を持ち、まさに句集のタイトルの「けむり」の印象である。敢て言うと、リズムがよい俳句が多いのだと思う。それが句の「軽み」とマッチしている。

決して「季題」を中心に俳句を詠んでいるわけではないので、我々の信条と一致しない句も多い。ただ楽しい俳句が多いのも確か。是非、このような句の楽しみ方も、味わって頂きたい。

 

・これもあのデュシャンの泉かじかめり 天気

季題は「悴む」。「デュシャンの泉」とは便器のことである。「20世紀でもっとも最もインパクトのあった現代芸術作品」に選ばれている。

http://www.arclamp.jp/blog/archives/000255.html

 

 寒い寒い一日、小便器の前に立って用をたすときの感慨。実にさらりとしているが、「デュシャンの泉」が持つ現代を象徴する或る歪みが伝わってくるのではないか。

 

・噴水と職業欄に書いて消す 天気

季題は「噴水」、こちらも不思議な一句。履歴書の職業欄に間違えて噴水と書いてしまい、慌てて消した。噴水を履歴書のどこに書いたのだろうか。もしかして名前が噴水だったのかもしれないし、噴水に関する著作があったのかもしれない。

 全く写生ではないし、そういう季題「噴水」の使い方について疑念を呈される方もいらっしゃると思うが、私は結局「噴水」が持つ、淡淡としたイメージが伝わってくれば勝ちだと思う。清涼感を感じ、「夏」の俳句であると思う。

 

●Ⅰ「切手の鳥」

はつなつの雨のはじめは紙の音

蚊柱が崩れ遠くの見えにけり

糸屑をつけて昼寝を戻り来し

餅花が頭にふれて遊び人

引越のあとの畳と紙風船

 

●Ⅱ「マンホール」

チョコレートにがし港のまぶしさに

ヒッピーに三色菫ほどの髭

ヨットひとつ風がつまんでいきさうに

海の家から海までの足の跡

首都高はひかりの河ぞ牡蠣啜る

 

●Ⅲ「だまし絵」

晩春のおかめうどんのやうな日々

卒塔婆のやうなアイスの棒なりき

枝豆がころり原稿用紙の目

十月や模型の駅に灯がともり

ぽんかんを剥いたり株で損したり

 

●Ⅳ「名前のない日」

缶切の先の濡れたる立夏かな

はつなつの土手ぶらぶらと入籍す

目のさめて畳の広き帰省かな

遠火事の音なく燃ゆる晩ごはん

野遊びの終りはいつもただの道

 

(杉原 祐之記)

西原天気ブログ「俳句的日常」

http://tenki00.exblog.jp/

 

西田書店のHP

http://www.nishida-shoten.co.jp/view.php?num=254

しなだしん句集『隼の胸』ふらんす堂_(杉原)

しなだしん句集『隼の胸』ふらんす堂

 

しなだしん句集『隼の胸』

しなだしん句集『隼の胸』

 

しなだしんさんの第二句集。ふらんす堂の「精鋭俳句叢書」として刊行。

しなださんは1962年新潟県柏崎市生まれ。1997年に「青山」に入会。2002年に「田」創立に参加、2006年まで同誌の編集長を務める。2008年に第一句集である『夜明』をふらんす堂より刊行。現在は、「青山」「田」の他に「OPUS」に所属。

 氏は小諸の日盛俳句祭を初め、最近は渋谷での「深夜句会」にも積極的に出席頂いており、「夏潮」会員でも馴染みのある方だと思う。

 大柄の身体を少し丸めつつシャイでありながら、己の俳論をしっかりと述べられる姿は大変印象的である。

 

 集中の句の特徴として、「一本芯の通ったナイーブな叙情」が挙げられる。柔らかい叙情の世界を難しい言葉を使わず、効果的な暗喩で描き出されようとしているのではないか。また、仮名の多用もそういう効果を狙っているのだと思う。

 類句類想を最も忌み嫌う氏の句であるので、句の出来の振幅は大きい。しかし、これだけの句を4年間の期間で句集としてまとめられているのは、氏の力のあることの証左であろう。

実際、氏は「日盛り祭」や「深夜句会」を初めとして、機会があればどこへでも顔を出し、句会に参加している。そのように句会の機会を通じて、氏は自分の句の精度を高めていっているのであろう。

 

・赤道を見てきし海月かもしれぬ しん

季題は「海月」。確か深夜句会で出されて句であったと記憶している。

非常に不思議な俳句。虚子の海月の句(「わだつみに物の命のくらげかな」)に繋がる雰囲気を持った俳句。「赤道」という火葬の点が妙に説得力を持って響いてくる。

ただの言葉遊びではなく、季題「海月」の様子が浮かんでくるので成功していると思う。

 

・しらがねの隼の胸まだ翔ばず しん

 季題は「隼」。句集のタイトルにもなっている俳句。こちらは非常に皇室間を感じさせる俳句。隼の開かれた胸を「しろがね」と具体的に写生している点が良い。「翔ばず」の否定形であるが句のニュアンスは弱まらず、最後まで力強い一句になっているのは季題「隼」が持つイメージであり、「しろがね」でそれを引き出すことに成功している。

 

 

●Ⅰ

さくらからさくらへ鳥のうらがへる

紙漉の女のかほもながれけり

 

●Ⅱ

数へ日の母の瞳を聴いてをり

掛毛布死者の合掌もりあがり

三食を父とともにし三が日

 

●Ⅲ

海苔篊にしづかな雨のあつまれる

数へ日のひと日に母の忌日あり

 

●Ⅳ

うぐひすや名もなく川のはじまれる

夜を来る馬の輪郭星涼し

 

●Ⅴ

ぼうたんの内はどろどろかもしれぬ

アパートへ秋果の函を引きずり込む

 

●Ⅵ

雪しろやおなじ名前の山と川

間男のやうにテントを這ひ出しぬ

 

●Ⅶ

流氷のあをぞら割つてゆくごとし

密葬に来てほうたるに囲まるる

新宿にこぼす花野のきれつぱし

或るあしたすず虫ららと死にたまふ

 

●Ⅷ

くぢら見るやうにさくらを見てをりぬ

白濁の朝へ漕ぎだす蓮見舟

まつさらな目玉を掬ふ泉かな

 

 (杉原 祐之記)

しなだしんさんのブログ「★しなだしんのスケッチブッ句★俳句日記

http://blogs.yahoo.co.jp/hai_goshichigo

ふらんす堂オンラインショップ

http://furansudo.ocnk.net/product/1746

 

★本連載は、完全に私の趣味で鑑賞をしてしまっております。

もし、ここで紹介した句集をご覧になった皆様の、感想や、好きな十句などをどしどしコメント欄にお寄せ下さい。

鑑賞に正解不正解はありません。是非皆様で学びましょう。

よろしくお願いいたします。

 

 

 

 

 

磯田和子『花火』鑑賞 (稲垣秀俊)

第零句集2号は磯田和子さん。和子さんの略歴は、杉原祐之さんの鑑賞文と重複するので割愛し、早速句の話に移る。

氷水そっと匙引くこぼさぬやう

季題は「氷水」、かき氷である。露店などで購入すると、コップ形の容器に山盛り入っているため、はじめの一匙には神経を尖らせることになる。大雑把な人であれば全く問題にしない景だが、ここにスポットライトを当てるところに、作者の繊細さを感じる。

磯田さんの繊細な心を窺える句として、さらに次の2句を挙げる。

秋繭の籠れる部屋の薄明り

松虫草人に会ひたる心地して

 本句集のタイトルは『花火』であり、掲載句のなかでこれを季題に用いたものは3句あるが、ここでは次の句を取りあげる。

続けざま揚がりて終ひ花火なる

「終ひ花火」という名詞化には賛否両論ありそうだが、花火大会の一際華やかなフィナーレを捉えた明朗な句だと思う。

 他に10句を選び、以下に記す。

穴まどひ見しと父にも怖きもの

成人の日の立山と対峙せる

大作をかけ終へ蜘蛛の休むかな

運ばれて来ては囃され夏料理

薔薇の芽に棘に濃き赤通ひけり

青といふ色のひときは熱帯魚

残る雪一塊の行き止まり

朝霧の退きつつ雨は本降りに

十薬の花に明るき杉木立

パンジー植ゑ準備完了花時計

 

(稲垣秀俊 記)

【お報せ】八千代句会 10月22日(土)16時30分〆10句

【お報せ】八千代句会 10月22日(土)16時30分〆10句

八千代句会が上記日程で開かれるそうです。

場所は永田さんのご自宅とのこと。興味のある方は

永田さん、前北さん、または夏潮会までお問合せ下さい。

浜松のプリンスも参加される予定のようであります。