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月命日カーネーションを束にして    羽重田民江

 季題は「カーネーション」。母の日の贈り物として使われることが多いが、初夏の花としてもさっぱりとして好感の溢れる花である。「月命日」は毎月ごとの「命日」。毎月、墓参を欠かさぬ人もあるし、仏壇で懇ろに経を読むという人もある。

 「仏様」の生前、「母の日」には必ず「カーネーション」の贈り物を欠かさなかった作者。月命日の「花」には生前を思い出して、同じ「カーネーション」の花束を供花として捧げたというのである。作者にとって実の母であったのか、それとも義理の母であったのかは分からないが、しみじみとした「深い情」が伝わってくる。(本井 英)

雑詠(2017年9月号)

月命日カーネーションを束にして		羽重田民江
鯉幟風をはらみて太々(フトブト)と
息災を知らせる新茶届きけり
風吹きてたんぽぽの絮横つ飛び

母の日の来れば母の忌夫の忌も		岩本桂子
枝移りせむとくちなは伸び上がる	児玉和子
雑居ビルのダンス教室秋灯		櫻井茂之
羅馬軍の隊列かくや鰯雲		山口照男

主宰近詠(2017年9月号)

自転車で 本井英

忍冬の蕾ぞ袋角に似たる

瀧道を出て夏雲に迎へらる

芍薬の蕾天窓ひらきけり

麦熟れて金といふ色したしめり

村潰えゆけば一面夏蕨




濁り鮒堅田夜話とてその昔

桟橋は板はづされて濁り鮒

夜が明けて見渡されたる出水かな

蟻地獄ごと手放せしわが家はも

緑蔭に放水銃のそれとなく




ぶつつりと胴を断たれて蛇乾く

市松に貼りて青芝雨が欲し

谷戸さらに深くあるらしほととぎす

ホスピスの夜の更けてゆくビールかな

稜線のにはかにひろし花あやめ




けふも降る閏五月の海の町

バスケットゴールが一基草茂る

虎の尾のおよそは同じ方へ尾を

屈託の極みの声を梅雨鴉

茅の輪くぐりて自転車で帰りゆく

課題句(2017年8月号)

「立秋」 川瀬しはす 選

今朝の秋フクギ並木に島の風		冨田いづみ
立秋の波音高き礁(イクリ)かな
中年に立秋の日のちりちりす		青木百舌鳥
また来るねと言ひてそれきり秋立ちぬ	山本道子
立秋や裁ちつぱなしのワンピース	大貫松子
毎年の立秋を過ぐロッヂかな		杉原祐之

石段を上がればありし茅の輪かな   藤永貴之

 季題は「茅の輪」。陰暦六月末の「夏越の祓」に関連したもので「菅貫」、「菅抜」という傍題もある。歳時記的には六月末のものとなるが、原則的には十二月の末にも同じことがあって然るべきで、実際に大晦日に「茅の輪」を立ててある神社も多くある。多くの解説書は「茅の輪くぐり」を厄除けと解説するが、筆者は「再生」を演じているものだと考えている。

 さて一句の味わいどころは「石段を上がればありし」。つまり「石段」の下にいた時には見えていなかった「茅の輪」が「石段」を上がってみたら「あった」というのである。そのことから毎年「夏越の祓」のために参拝している神社ではないことも判る。

 たまたま旅先で詣でた神社で、長い石段を登って丘の上の大前にでたところ「茅の輪」があった。そこで作者は、ああ、もう「夏越の祓」の頃となっていたのだと知ったのであろう。(本井英)