季題は「茅の輪」。陰暦六月末の「夏越の祓」に関連したもので「菅貫」、「菅抜」という傍題もある。歳時記的には六月末のものとなるが、原則的には十二月の末にも同じことがあって然るべきで、実際に大晦日に「茅の輪」を立ててある神社も多くある。多くの解説書は「茅の輪くぐり」を厄除けと解説するが、筆者は「再生」を演じているものだと考えている。
さて一句の味わいどころは「石段を上がればありし」。つまり「石段」の下にいた時には見えていなかった「茅の輪」が「石段」を上がってみたら「あった」というのである。そのことから毎年「夏越の祓」のために参拝している神社ではないことも判る。
たまたま旅先で詣でた神社で、長い石段を登って丘の上の大前にでたところ「茅の輪」があった。そこで作者は、ああ、もう「夏越の祓」の頃となっていたのだと知ったのであろう。(本井英)