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課題句(2018年8月号)

「鳳仙花」    今井舞々選
  
兄妹別離の昔鳳仙花            田尻くがを
鳳仙花妹が弾くや卓袱台に
防空壕ありたる土に鳳仙花
かくれんぼ屈めば飛んで鳳仙花    三上朋子
蜑が家のトロ箱に咲く鳳仙花      山口照男
坂少し降りて着く宿鳳仙花        梶原一美
鳳仙花宇宙と交信始めたる        浦上ひづる

難持坂をのぼれば花の雲のうへ    冨田いづみ

 「難持坂」は大田区池上本門寺の参道「此経難持坂」、九十六段の階段。法華経宝塔品九十六文字に因んで作られたという。季題は「花の雲」。桜の花が咲き満ちて、あたかも「雲」のように犇めいている様子である。  池上本門寺に詣でた作者は池上線の駅から歩いて、呑川に架かる橋を渡り、満開の桜の道を進み、「難持坂」の急階段を登って仁王門に達したのであろう。そして振り返った時に、作者の目に飛び込んで来たのは眼下に蟠る「花の雲」。「難持坂」を登っている最中は脇目も振らずに、ひたすら歩いた。そのご褒美のような絶景に心奪われている作者の、満足した姿が見える。体験をそのまま句にしたものだが、真っ直ぐな表現の中に、俳句の至福のようなものが詰まっている。(本井 英)

雑詠(2018年8月号)

難持坂をのぼれば花の雲のうへ            冨田いづみ
義父逝きしこと葉桜となりしこと
チューリップ閉づる力のなく散れる
仏具屋にたまの客あり春埃

熊笹の若葉ぬつぺり緑色        柳沢晶子
客着いてロビー華やぐアマリリス    町田 良
ステンレス色に霞める今朝の海     浅野幸枝
レントゲンバスが来てをり遅桜     矢沢六平

主宰近詠(2018年8月号)

氷室への径   本井英

朝日注ぐほどに華やぎ谷若葉

氷室への径の踊子草のころ

雉子の声にはかに近し村はづれ

万緑になほまぎれざり雉子の赤

馳せちがふは軽トラばかり雉子の昼




塗り畦にはや走る罅美しき

代掻くや蓼科山を空の隅

代掻のタイヤの泥のきらきらす

狼藉のやうに子供ら田を植うる

田植にはまじらず捕虫網揮ふ




打ち捨てし谷戸茱萸が生り柿が咲き

磯茨と命けむかなや白く低く

風裏に咲きてやすらか磯茨

洒水の瀧 六句

十薬の丈の長けしも瀧近み 瀧風の果てに揺るるは鴨足草




沢音にかむさりそめし瀧の音

駆け下ることにたゆまず瀧の白

かさね鳴く河鹿に気脈ありにけり

真清水を掬し余命を祈るなり

卯の花やダム湖の景に馴染めざる

課題句(2018年7月号)

「天道虫」      町田 良選
                                                      
開けし掌に天道虫と青き草      青木百舌鳥
てんと虫だまし見て幸せさうで

天道虫絵本の野原横切りけり     津田祥子
星数ふ天道虫を掌にのせて      井上 基
てんとむし日輪小さくやどしたる   本井 英
日の中へ天道虫の消えにけり     園部光代