「西日」 井上 基 選 西日入る一間暮しや引揚げ者 山本道子 大西日東京タワー完成す 大西日両手で庇作り行く 飯田美恵子 林中や雨に西日に荘厳され 藤永貴之 たかだかと海跨ぐ橋西日中 本井英 窓一つ炎となりし西日かな 岩本桂子
課題句(2014年7月号)
コメントを残す
「西日」 井上 基 選 西日入る一間暮しや引揚げ者 山本道子 大西日東京タワー完成す 大西日両手で庇作り行く 飯田美恵子 林中や雨に西日に荘厳され 藤永貴之 たかだかと海跨ぐ橋西日中 本井英 窓一つ炎となりし西日かな 岩本桂子
「五月雨」 青木百舌鳥 選 鵜の黒く礁の黒くさみだるゝ 藤永貴之 道幅を流るゝ雨や五月雨 陣痛の波寄せ引いてさみだるゝ 前北麻里子 雨の息てふものありしさみだれて 山内裕子 五月雨に潤びきりたる舫綱 本井 英 五月雨に煙りて遠し浮御堂 原 昇平
「祭」 柳沢木菟 選 女人列伸びて縮んで賀茂祭 前田なな 神名備の闇にしみ入る祭笛 夕風に乗りて厨に祭笛 宮田公子 山車過ぎしあとを子が駆け老が駆け 藤永貴之 ゆるゆると縄ひかれゆく子供山車 冨田いづみ 丈あはず子供御輿のかしぎ行く 臼井静江
「シクラメン」 山本道子 選 巻きながらつぼめる赤やシクラメン 小沢藪柑子 シクラメン支へる茎の濃紫 花びらに疲れ兆せるシクラメン シクラメン舗道に並べ銀座裏 津田伊紀子 書斎から書庫への廊下シクラメン 冨田いづみ シクラメン嬰(やや)を抱きて窓に倚る 児玉和子 外の風知らずに育ちシクラメン 山口佳子
季題は「春祭」。他の歳時記類では既に散見していた季題であるが、虚子篇『新歳時記』には無く、ホトトギス編『新歳時記』にも見えなかったが、近年「三訂版」に至って初めて立項された。春季に行われる「祭」ということであるが、夏の「祭」、「秋祭」などに比べると一般的な印象を結びにくく、どこやら山間の祭を連想させる。本来の新年の予祝行事が新暦の関係などから、立春以後にずれ込んだ印象もある。
さて掲出句であるが、どこか春遅き山里のひっそりした春祭の雰囲気が漂う。民俗学の方面には詳しくはないが、三河、信濃の山中に伝わっているというさまざまの「祭」などを思い描いてもいいだろう。ともかくも「風花」の舞う淋しい峠を徒歩で越えて「春祭」をわざわざ見に来た人物がいるというのである。例えば「青崩峠」などは、現在でも道路(国道)は不通の状態で、歩いて越えるという。
「風花」と「春祭」の季重なりを案ずる向きもあろうが、この句の場合、全く問題ない。 (本井 英)