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課題句(2014年7月号)

「西日」      井上 基 選

西日入る一間暮しや引揚げ者		山本道子
大西日東京タワー完成す

大西日両手で庇作り行く		飯田美恵子
林中や雨に西日に荘厳され		藤永貴之
たかだかと海跨ぐ橋西日中		本井英
窓一つ炎となりし西日かな		岩本桂子

課題句(2014年6月号)

「五月雨」			青木百舌鳥 選

鵜の黒く礁の黒くさみだるゝ		藤永貴之
道幅を流るゝ雨や五月雨

陣痛の波寄せ引いてさみだるゝ		前北麻里子
雨の息てふものありしさみだれて	山内裕子
五月雨に潤びきりたる舫綱		本井 英
五月雨に煙りて遠し浮御堂		原 昇平

課題句(2014年5月号)

「祭」         柳沢木菟 選

女人列伸びて縮んで賀茂祭		前田なな
神名備の闇にしみ入る祭笛
 
夕風に乗りて厨に祭笛		宮田公子
山車過ぎしあとを子が駆け老が駆け	藤永貴之
ゆるゆると縄ひかれゆく子供山車	冨田いづみ
丈あはず子供御輿のかしぎ行く		臼井静江

課題句(2014年4月号)

「シクラメン」		山本道子 選

巻きながらつぼめる赤やシクラメン	小沢藪柑子
シクラメン支へる茎の濃紫
花びらに疲れ兆せるシクラメン

シクラメン舗道に並べ銀座裏		津田伊紀子                 
書斎から書庫への廊下シクラメン	冨田いづみ      
シクラメン嬰(やや)を抱きて窓に倚る	児玉和子
外の風知らずに育ちシクラメン		山口佳子

風花の峠越え来て春祭   児玉和子(2014年7月号)

 季題は「春祭」。他の歳時記類では既に散見していた季題であるが、虚子篇『新歳時記』には無く、ホトトギス編『新歳時記』にも見えなかったが、近年「三訂版」に至って初めて立項された。春季に行われる「祭」ということであるが、夏の「祭」、「秋祭」などに比べると一般的な印象を結びにくく、どこやら山間の祭を連想させる。本来の新年の予祝行事が新暦の関係などから、立春以後にずれ込んだ印象もある。

 さて掲出句であるが、どこか春遅き山里のひっそりした春祭の雰囲気が漂う。民俗学の方面には詳しくはないが、三河、信濃の山中に伝わっているというさまざまの「祭」などを思い描いてもいいだろう。ともかくも「風花」の舞う淋しい峠を徒歩で越えて「春祭」をわざわざ見に来た人物がいるというのである。例えば「青崩峠」などは、現在でも道路(国道)は不通の状態で、歩いて越えるという。

 「風花」と「春祭」の季重なりを案ずる向きもあろうが、この句の場合、全く問題ない。  (本井 英)